【記事69850】「対策とれば事故起きず」地震学者が証言 東電公判(日経新聞2018年5月9日)
 
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「対策とれば事故起きず」地震学者が証言 東電公判

 福島第1原子力発電所事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東京電力旧経営陣3人の第11回公判が9日、東京地裁(永渕健一裁判長)であった。地震学者で元原子力規制委員会委員の島崎邦彦・東京大学名誉教授が証人として出廷し、「(政府機関の)長期評価に基づいて対策をとっていれば、原発事故は起きなかった」などと証言した。
 公判では、東電旧経営陣が巨大津波の襲来を予見できたかどうかが争点。旧経営陣側は、政府の地震調査研究推進本部(地震本部)が2002年にまとめた巨大地震の長期評価について、「信頼性が低く、直ちに対策を取るのは不可能だった」と無罪を主張している。
 島崎氏は地震本部の部会で部会長を務めるなど、他の専門家とともに長期評価の策定に携わった。公判では議論の経過を説明したうえで、当時は長期評価の信頼性を疑問視する議論はなかったと証言。政府の中央防災会議で長期評価が防災対策に反映されなかったとして、「科学に反している」と批判した。
 11年3月の原発事故直前、東北沿岸に襲来する津波が内陸まで達する可能性があるとする長期評価の改訂版を公表する予定だったが、事務局の提案で4月に延期することを了承したと説明。島崎氏は「延期を了承しなければ、(津波への注意喚起につながり)多くの人が助かったかもしれない。なぜ延期したのかと、自分を責めた」と述べた。

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