【記事71360】東海第二、新基準「適合」 被災原発で初 規制委了承(東京新聞2018年7月4日)
 
参照元
東海第二、新基準「適合」 被災原発で初 規制委了承

 原子力規制委員会は四日の定例会合で、日本原子力発電(原電)の東海第二原発(茨城県東海村)が、新規制基準に「適合」したことを示す審査書案を了承した。東日本大震災で被災した原発の新基準適合は初めて。再稼働には四十年の運転期限となる十一月末までに、二十年の運転延長の可否など残り二つの審査を通過する必要がある。さらに、周辺六市村の同意が必要で、一自治体でも反対すれば動かせない。(越田普之)
 東海第二は震災で自動停止したが、外部電源を喪失。高さ約五・四メートルの津波に襲われ、非常用ディーゼル発電機の一部が使えなくなり、残りの発電機でかろうじて原子炉を冷却した。
 事故を起こした東京電力福島第一と同じ沸騰水型という発電方式で、同型の新基準適合は東電柏崎刈羽6、7号機(新潟県)に続き二例目。
 規制委は五日から一カ月間、意見募集(パブリックコメント)を実施。八月下旬にも、審査書案を正式決定する。
 原電は二〇一四年五月に審査を申請。審査書案によると、津波の高さを最大一七・一メートルと想定し、原発の三方に高さ二十メートルの防潮堤を築く計画を立てた。火災対策として、総延長千四百キロに及ぶケーブルの四割弱を燃えにくいケーブルへ交換し、ほかは防火シートなどで覆う。重大事故で原子炉格納容器が破裂するのを防ぐため、内部の蒸気を抜くフィルター付きベント(排気)設備も整備する。
 対策工事費は、当初試算の倍以上の千七百四十億円に膨らみ、原電は資金調達のため、東電と東北電力から支援を受ける。工事は二一年三月までに完了予定。
 再稼働には運転期限の十一月二十七日までに、運転延長の可否と、設備の詳細を定めた工事計画について、規制委の認可が必要となる。工事計画の審査が原電の準備不足で遅れていたが、大型設備の性能試験を終え、間に合う見通しが立った。残りの審査も通過する公算で、廃炉は免れる。
 原電は三月、東海村や水戸市など三十キロ圏六市村から、再稼働の同意を得るとした新協定を締結。水戸市議会は六月、「住民理解を得ないままの再稼働は認めない」とする意見書を可決しており、同意が得られる見通しは立っていない。
 <東海第二原発> 日本原子力発電が1978年11月に営業運転開始。出力は110万キロワットで、電気は東京電力や東北電力に供給してきた。住民の避難計画策定が必要な30キロ圏の14市町村には、全国の原発で最多の約96万人が暮らす。都心に最も近い原発で、都庁までの距離は福島第一からの半分程度の約120キロ。放射能が漏れる重大事故が起きた場合、首都圏全域に甚大な被害を及ぼす可能性がある。


KEY_WORD:TOUKAI_GEN2_:FUKU1_:KASHIWA_: