【記事62380】<南海トラフ地震>JR、臨時情報後も運行 新制度開始(毎日新聞2017年11月19日)
 
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<南海トラフ地震>JR、臨時情報後も運行 新制度開始

 政府が大地震への警戒を呼びかける情報が今月から変わった。東海地震を予知した上で首相が出すことになっていた「警戒宣言」は事実上なくなり、気象庁が東海地震を含めた南海トラフ地震の発生の可能性が高まった時に臨時情報を出す形となる。予知を前提としないあいまいな情報に変わるため、東海地方の自治体や企業には、情報発表時の対応を緩める動きが広がる。新たに情報のカバー地域となる西日本でも、対応策の検討が進んでいる。【池田知広】
 従来は東海地震が予知された場合、強い揺れや大津波が予想される地域の自治体や企業は住民サービスや経済活動を止めてでも、備えを優先することにしていた。JR東海やJR東日本はおおむね震度6弱以上の揺れが想定されるエリアに列車が進入しないよう運行を制限し、東海地方や南関東などでは、小中高校を休校とすることになっていた。中部電力は浜岡原発(静岡県御前崎市)の運転を停止させる方針。1日当たりの経済損失は約2000億円と試算されていた。
 しかし、新たに出される南海トラフ地震に関連する臨時情報は、警戒宣言に比べて確度が低く、「空振り」もあり得る。このため、鉄道会社や自治体は対応の見直しを進めている。
 JR東海とJR東日本は、臨時情報が出ても新幹線と在来線の運行を可能な限り継続することにした。神奈川県教委は、情報が出た場合でも県立高校で平常通りの授業を実施することを決め、各校に通知した。愛知県教委も休校措置は取らない方針に転換する。一方、中部電は浜岡原発の対応について、まだ決めていない。
 臨時情報は東南海・南海地震などへの警戒も呼びかける内容となるため、西日本でも対応の検討を迫られる。
 JR西日本はJR東海などと同様に、情報が出ただけでは運行を止めない構えだ。四国電力も伊方原発(愛媛県伊方町)の運転を続ける。設計上想定する最大の地震の揺れ(基準地震動)と比べ、南海トラフ地震の揺れははるかに小さいと予想されているからだ。
 一方、臨時情報への対応の仕方が自治体や企業に委ねられ、沿岸の住民が事前に避難すべきか否かなどの統一した見解がない現状に、戸惑いの声もある。国は対応方法を定めたガイドラインを示す方針だが、自治体からは早急な策定を望む声が相次いでいる。

 【ことば】南海トラフ地震に関連する臨時情報
 南海トラフ巨大地震の想定震源域でマグニチュード7以上の地震や地殻変動など、大規模地震の前兆の可能性がある現象を観測した場合、政府が国民に警戒を呼びかけるために出す情報。専門家でつくる評価検討会の議論に基づき、気象庁が発表する。地震の予知は難しいという前提に立っているため「空振り」も想定されることや、東海地震だけでなく東南海・南海地震なども含めた幅広い被害想定域に警戒を呼びかけるなどの点で、従来の仕組みとは異なる。

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