【記事18327】多数の断層見落としか 柏崎原発沖70−80年代調査 国も評価を認定 東電 安全審査に疑い強く(新潟日報2007年11月15日)
 

※以下は上記本文中から重要と思われるヶ所を抜粋し、テキスト化したものである

 中越沖地震によって被災した東京電力柏崎刈羽原発の沖合で東電が一九七〇−八〇年代に実施した断層調査で、多数の断層を見落としていた可能性が高いことが十四日、同社が開示した海底音波探査の詳細なデータの分析で分かった。断層が疑われる地点の三分の二は東電が断層と認めず、少なくとも四つの断層の存在を見逃したまま原子炉増設を申請した疑いが強い。国の安全審査もこの評価を認めており、その妥当性が問われそうだ。

 東電が今回初めて開示したデータは2、5号機と3、4号機の増設に伴い七九、八〇、八五年に実施した延べ約千六百七十キロ分。この調査結果を基に周辺海域には一つの活断層と三つの断層があると評価。増設申請に盛り込み、国もこれを通していた。
 しかし、新潟日報社が入手したデータを見た東洋大社会学部の渡辺満久教授(地形学)は「(東電が当時評価した)各断層の延長線上にも断層が延びている特徴をデータは示しているが、東電は一部しか断層と認定していない」と過小評偶の可能性を指摘。さらに、東電が認めていない場所にも断層が存在しているとした。
 渡辺教授によると、海底の地下に断層があっても、その上部を覆う地層が軟弱な場合、断層が明確に表面に現れず、たわんだような状態になるという。そうした場所を東電は断層と認定しなかった疑いがある。
 渡辺教授は「三十年近く前の知見で十分断層と認定できたはずだ。当時の東電の評価はあり得ない。もっと問題なのはこれを見逃していた国の安全審査。専門家がこのデータを見れば必ず断層と分かるはずだ」と述べた。
 経済産業省原子力安全・保安院は「当時の知見を基に最善の努力を払ったと理解しているが、評価に不十分なところがあった可能性は否定できない」としている。
 東電は、判断の根拠は分からないとした上で「過小評価という指摘があるが、当時の研究レベルでは最善を尽くしたのだと思う」と釈明。七月の中越沖地震発生より前から断層再評価の必要性は認識していたが、間に合わなかったとしている。

解説

 東電が今回開示した柏崎刈羽原発周辺の海底音波探査の詳細なデータは、同社による断層の過小評価の可能性を浮かび上がらせた。同時に、東電の評価を妥当とした通商産業省(当時)や原子力安全委員会による安全審査が十分機能していなかった疑いも出てきた。
 同原発周辺海域の断層については、東電は一九七五年に提出した1号機設置許可申請書で文献に当たっただけで「いずれも小規模」と判断。今回開示されたデータを基に行った当時の評価でも、活断層は長さ1.5キロの1本だけとしていた。
 「当時としては最新の知見を取り入れてきた」と説明してきた東電。開示されたデータには、その言葉を覆す可能性がある内容が含まれていた。
 データからは、東電の不自然な評価が目立つという。地形学的には断層の存在が疑われる線状につながる急斜面について、東電は一部を断層と評価しながらも、その続きは断層としていなかった。
 電力会社の見落としがあった場合、それをチェックするのが国の安全審査の役割だ。原子力安全委などは八一年以降の同原発2−5号機増設の審査でこのデータが示されたはずだが、結果として気づかなかった。
 審査では「国内最高峰の学者が専門的な判断をしている」(原子力安全・保安院)という。渡辺満久・東洋大教授は「安全審査に携わる専門家が見落としたことの方が問題」と強調する。国も当時の安全審査の在り方の検証が必要だ。

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