【記事18177】原発検証に難題 地質複雑、前提の断層特定手間取る 糸口は余震の震源分布 東電の予測なぜ過小? 国含めた事前対応の検証必要 中田高・広島工業大教授(地形学)の話(朝日新聞2007年8月3日)
 

※以下は上記本文中から重要と思われるヶ所を抜粋し、テキスト化したものである

 断層論争は未決着だが、原発での地震動が想定を大きく超えたことは明白だ。東電の予測はなぜ過小だったのか。
 今回の地震を起こした断層が西傾斜なら、陸の活断層を甘くみていた可能性がある。
 原発の東約14キロには長岡平野西縁断層帯(全長約83キロ)がある。柏崎刈羽原発は@同断層帯の一部になっている鳥越断層(長さ17.5キロ)が起こすマグニチュード(M)6.9A同断層帯よりさらに原発に近い常楽寺断層(同12.5キロ)が起こすM6.7B直下10キロで起きるM6.5の三つの地震を主に想定して設計されていた。
 東大地震研の余震分布と地質構造の分析から、今回の地震を起こした断層は鳥越断層とつながっているとの説も出てきた。断層面が傾いていたので、原発までの距離が想定より近く、揺れが大きかった可能性がある。
 断層が東傾斜なら、海の活断層を過小評価していた可能性が出てくる。
 東電は79〜85年の調査で海底に断層を見つけた。今回の地震と関連する可能性を東電も認めた断層だ。
 束電は断層の長さを約8キロと見積もったが、地質調査所(現産業技術総合研究所)が94年に発行した海洋地質図では約20キロもあるとされた。東電は00年ごろ違いに気づき、昨年の原発の耐震指針改定を機に、再調査に向けた準備を進めていたところだったという。
 ただ中田高・広島工業大教授らは東電の資料を再分析し、「調査当時でも、海底の活断層は8キロより長
いと判別できたはずだ」と指摘する。

中田高・広島工業大教授(地形学)の話

 どの断層が今回の地震を起こしたか確定していないが、東京電力の事前の想定や、国の審査に問題がなかったのか、きちんと検証する必要がある。原発の耐震指針に問題があって当時の知見では今回の地震が想定できなかったのか、それともほかのどこかに間違いがあったのかを、はっきりさせなければいけない。
 原発の耐震指針が昨年、全面的に改訂されて、各電力会社は海や陸の活断層の再調査を進めている。
 しかし、昨年6月に島根原発で、今年3月には志賀原発で、電力会社の活断層の過小評価と、それを国の審査も見過ごしていたことが明らかになった。
 再調査以前に、こうした過小評価の原因をはっきりさせることが先決ではないか。調査や審査の問題点も検討・改善すべきだ。そうでないと、新指針に基づいて形だけ再調査をしても安全は確保できないだろう。

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