【記事10282】暗黒の新潟 緊張の第2夜 8000世帯、浸水のまま 下火のほうに ホッとした顔も 完全復旧に5年も 遅れる水道、ガス、電気 5万人が避難 一部に電気も 土のうを早く 感謝される若い力 自衛隊 1万6000人が待機 谷川岳登山に警告 地震で沢の様子変わる(毎日新聞1964年6月18日)
 
 

※以下は上記本文中から重要と思われるヶ所を抜粋し、テキスト化したものである

(前略)昭和石油の隣にある東北電力火力発電所の水素タンクが爆発すれば半径1キロの地域は大被害を受ける心配がある。午後1時20分、新潟防災本部は、タンク群の林立する周辺の30余町、約5万人に緊急避難命令を出した。
 逃げ出すには運河をまたぐ山下橋が唯一の出入口。急な避難でほとんどの人はわずかな身の回り品をふろしきに詰め、肩にかけ、黒煙や悪臭、油煙に追われるようにして、冠水した道路をはだしで山下橋を渡った。
(中略)地震のあと津波の余波をうけ、まだ一階は水びたしになっている新潟市大川前通りのある一軒を尋ねた。(中略)
信濃川の東岸で約600メートル、西岸で約3キロにわたり、堤防がズタズタになったため、海水が流れ込み、両岸5400ヘクタールが浸水した。山ノ下、沼垂(ぬったり)町などは1.5メートルを越え、約8000世帯が浸水のまま二日目を迎えた。水はいっこうに引く様子もない。
 土のう積みを依頼された陸上自衛隊第12師団高田駐とん連隊は、信濃川の万代橋から河口までの両岸に、15万俵の土のうをつみ、下水処理ポンプで排水する計画をたてたが、かんじんの土のうが到着しないという。
 市内16カ所の下水処理ポンプ場のうち4カ所だけを残してあとはメチャクチャにこわれている。しかもかんじんの浸水地帯の排水ポンプは全部ダメ。18日中に信濃川西岸のポンプ場を修理して運転を始めるというが、東岸の山ノ下地区は順調にいっても一週間はかかるとみられる。(中略)
日本海にケシ粒のようにポツンと浮かんだ新潟県岩船郡沖合の粟島が、新潟地震でアッという間に1.2メートルから1.5メートルも隆起し、島の人たちは目をシロクロさせている。
 異変に気づいた島民のしらせで、かけつけた海上保安庁の巡視船”しなの”が17日調べたところでわかったもので、島民の話では島全体が大ゆれにゆれたと思ったら、周囲の海に浮かんでいたカキノバ崎や旗崎といった岩とすっかり陸続きとなっていたという。
 ともあれ、あちこちで陥没つづきのこんどのじしんで、たった一つの隆起現象。新潟大学理学部では「粟島をささえていた地殻が割れ、上下の断層運動がおこったものらしい」と診断していた。(中略)
【沼田】群馬県谷川岳警備隊本部と同遭難対策班は17日、新潟地震の影響で谷川岳が岩ナダレなど危険な状態となり、また沢の様子が相当に変わっているので、当分登山を見合わせるよう警告した。(後略)
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