[2019_03_11_04]M8地震で銀座が水没!? いつ起きてもおかしくない「巨大海溝型地震」 専門家が警鐘(夕刊フジ2019年3月11日)
 
参照元
M8地震で銀座が水没!? いつ起きてもおかしくない「巨大海溝型地震」 専門家が警鐘

 東日本大震災の発生から8年。「3・11」は太平洋沖の日本海溝が引き起こした地震だが、東京、大阪の2大都市周辺も同様の「海溝型地震」が繰り返し襲ってきた歴史がある。最近も列島各地で地震が頻発。9日午前1時8分頃、岐阜県美濃中西部を震源とする地震があり、揖斐川町東杉原で震度4を観測したばかり。今後について、専門家は「マグニチュード(M)8級の巨大地震は必ず繰り返す」と指摘、東京・銀座や大阪・梅田が津波で水没、高層ビルでも大きな揺れで人的被害が生じる恐れがあると警告する。



 海溝型地震は、海側のプレートが陸側のプレートの下にもぐり込む際にひずみが生じ、陸側のプレートがはね上がることで発生するとされる。
 首都圏で、フィリピン海プレートと北米プレートの境界にある「相模トラフ」で大地震が引き起こされたのが1703年の元禄関東地震。そして1923年の大正関東地震(関東大震災、M7・9)では、地震史上最大となる10万人以上が犠牲となった。
 「首都圏の3000万人は大地震が直下で起きるところで住んでいるというのが現実だ」と強調するのは、夕刊フジで「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」(毎週木曜)を連載する武蔵野学院大学特任教授の島村英紀氏。
 元禄関東地震の詳細は不明だが、「鎌倉で海岸から約2キロ離れた鶴岡八幡宮まで津波が来たとされる」(島村氏)という巨大な規模だった。
 その約200年後に発生したのが関東大震災だった。現状ではそれから100年近く経過している。島村氏は「従来は次の元禄級の大地震まで100年程度は大丈夫との見解が大勢だったが、3・11が列島地下の基盤の岩を全て動かしてしまった」といい、いつ新たな巨大地震が起きてもおかしくないという。
 西日本の地域では、フィリピン海プレートとユーラシアプレートの間にある「南海トラフ」による地震の脅威が迫っているのはご存じの通りだ。
 江戸期には1707年の宝永地震、昭和には1944年の東南海地震(M7・9)、46年の南海地震(M8・0)が発生している。
 災害史に詳しい立命館大学環太平洋文明研究センターの高橋学教授は、「宝永地震を描いた江戸時代の絵図によると、大阪城の西側が津波の被害を受けている。また、東南海地震と南海地震は戦中・戦後の混乱のためデータがなく一番直近の地震のことがよく分からない」と述べ、対策の難しさを指摘する。
 過去の巨大地震の経験に学ぶことも重要だが、現代の大都市圏ならではの新たな危険も潜んでいるという。
 前出の島村氏は「近年、高層ビルだけを揺らす『長周期表面波』の存在が分かってきた。地震波が遠くまで減衰せずに届く現象で、2004年の新潟中越地震でも東京・六本木のエレベーターのメインワイヤのうち1本が切れたほか、11年の東日本大震災時にも大阪のビル内で数十カ所の破損があった」と語る。
 地震波によって生じる長周期地震動の影響で「近くの揺れの場合、倒壊はしなくても高層階では片振幅5メートルともいわれ、ビル内に設置した複写機や机が人間を押しつぶしたり、窓ガラスが割れて人が落下する危険性もある」という。
 津波の被害も懸念される。前出の島村氏は「東京都心に津波が来ると東部は浸水することがありうる。錦糸町駅周辺も海抜0メートルで、銀座も水に浸かり大手町も危ない。東京湾はほぼ人工海岸で火力発電所や製鉄所、造船所など危険な建造物が林立している。50センチ〜1メートルの津波で大被害が生じる恐れがあるのが東京湾の弱いところだ」と語る。
 一方、前出の高橋氏は大阪周辺の危険性についてこう分析する。
 「御堂筋や梅田など大阪城の西側部分は完全な津波エリアだ。現代は低地部に人口が密集しているうえ、大阪では1960〜75年ぐらいの地下水のくみ上げで場所によっては1〜2メートル程度地盤が沈下しており、これまで被害がなかった地域が浸水する恐れもある。大阪は東京と比べて避難すべき高台が少ないのも特徴だ」
 身の安全を熟考する節目にしたい。

KEY_WORD:HIGASHINIHON_:NANKAI1946_:TOUNANKAI_:HOUEI_:KANTOUDAISHINSAI_:CHUUETSU_:GENROKU_:TSUNAMI_: