[2019_03_29_03]地球をかすめた小惑星(島村英紀2019年3月29日)
 
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地球をかすめた小惑星

 3月16日に、小惑星が地球をかすめるように通過した。直径約8メートルの小惑星だが、地球と月の間の約半分の22万キロの距離だった。この距離は近い方だ。
 2017年に近づいて話題になった小惑星「2014 JO25」の最大径は650メートルだったが、一番近づいたときにも180万キロあった。月までの距離の約5倍である。
 これは2004年に小惑星「トータティス」が156万キロまで近づいて以来13年ぶりのことだった。トータティスは直径約5キロだった。
 もっと小さくて10メートル級の隕石が落ちてきても、大変なことになる。
 たとえば2013年にロシア西南部・チェリャビンスクに落ちて爆発した小惑星は約17メートルの大きさだった。明るい流れ星はいくつかのドライブレコーダーに捉えられた。衝撃波で東京都の面積の7倍もの範囲で4000棟以上の建物を破壊して1500人もの重軽傷者を生んだ。
 2018年末には、10メートルほどの小惑星がベーリング海に落下した。幸い被害もなく、見ていた人がいない海上だった。ベーリング海は米国アラスカ州とロシアを隔てる海だ。サケやカニなどの好漁場として知られる。この小惑星は秒速約30キロで大気圏に突入して爆発した。
 この落下は、包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)が使っている観測器で分かった。先週、米国航空宇宙局(NASA)も衛星写真を公開した。
 CTBTOのシステムは複数の地震計と音響センサーから構成されていて、人間の耳には聞こえない可聴外の超低周波音も検出する。数万キロ先の音も捉えられる。このシステムは核実験に起因する大気圏内の爆発を見つけるために、常時動いているものだ。
 核爆発は大気圏内の爆発が禁止され、以前の核保有国の間では、地下核実験も包括的核実験禁止条約によって禁止されている。
 だが、インドやパキスタンや北朝鮮のように、この条約に加盟していない国が、これからも増えるかも知れない。これらの国にとっては核実験が国家の権威を誇示するものだ。このために監視網はいまでも動いている。
 ベーリング海に小惑星が落下したときには、放出されたエネルギーは173キロトンだった。1945年に広島に投下された原子爆弾のエネルギーの10倍以上だ。
 もちろん、流れ星は下を見て落ちてくれるわけではない。都会のような人口密集地だったら大変だった。
 直径数十メートル以上の天体は、地球の近傍に100万個もあると考えられている。だが、そのうち発見されているのは1万個ほどにしかすぎないのだ。チェリャビンスクに落ちた小惑星も、落ちてくるまで知られていなかった。青天の霹靂である。
 最近は、地球にはいままで考えられていたよりも頻繁に小惑星が接近していることが分かってきた。
 もちろん中には、地球まで落ちてくるものもある。多くの天体が私たちの頭上を通過しているのをもっと心配した方がいいのかもしれない。

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