[2019_04_17_02]社説:核燃料取り出し 廃炉の端緒にすぎない(京都新聞2019年4月17日)
 
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社説:核燃料取り出し 廃炉の端緒にすぎない

 東京電力が福島第1原発3号機の使用済み核燃料プールから核燃料の取り出し作業を始めた。
 炉心溶融が起きた1〜3号機のプールには未使用も含めると1573体もの核燃料が保管されている。
 東電は3号機プールの使用済みと未使用の燃料566体を2020年度中に搬出する計画だ。
 放射線量が高い環境下で、クレーンなど特殊な機器を使っての遠隔作業になる。スケジュールありきでなく、作業員の安全を最優先にしてもらいたい。
 東電は当初、14年末からの作業開始を目指していたが、装置の不具合などで延期が繰り返されてきた。
 燃料取り出し用の機器やクレーンなどが訓練段階で雨水や異物混入で度々故障したためだ。
 水素爆発で大きな被害が出た場所での作業だけに、予想外のトラブルが起きるのはやむを得ない。
 機器に不具合が起きれば作業員が立ち入る可能性があるという。入念な被ばく対策が必要だ。
 取り出した核燃料は容器に収めて別のプールで保存するが、最終的な搬出先は決まっていない。566体もの燃料を安全に保管し続ける場所や態勢をどう確保するのか。国や東電は説明してほしい。
 1、2号機からの燃料取り出しにも先行き不透明感がある。東電は開始時期を「23年度めど」としているが、すでに当初計画から3年も遅れている。
 1号機では水素爆発で崩落した屋根の鉄骨の撤去作業が今年1月から始まったばかりだ。高い放射線の中で遠隔操作しているだけに、トラブルは少なくないのではないか。
 福島第1原発の廃炉には30〜40年かかるとされている。使用済み核燃料の搬出が始まったとはいえ、廃炉作業としては緒に就いたにすぎない。その先には溶け落ちた核燃料(デブリ)の回収という困難な作業が待ち受ける。
 東電はどの号機からデブリ取り出しを始めるかを本年度中に決める方針だが、デブリの状態によっては計画の見直しを迫られる可能性もある。
 作業にあたる人員の確保も、これまで以上に難しくなろう。
 いずれも、原発事故のリスクの大きさを物語っている。
 安倍晋三政権は原発再稼働を推進している。しかし、一度、事故を起こせば、事態収拾に膨大な労力と時間がかかることを改めて直視する必要があるのではないか。

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