[2019_05_21_05]「特重施設」問題について 日本の原発にメルトダウンが発生した時、放射性物質が大量に飛散する事を防止するための最も重要な設備 中西正之(元燃焼炉設計技術者)(たんぽぽ舎2019年5月21日)
 
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「特重施設」問題について 日本の原発にメルトダウンが発生した時、放射性物質が大量に飛散する事を防止するための最も重要な設備 中西正之(元燃焼炉設計技術者)

◎ 2019年4月25日の多くの新聞の朝刊で、「テロ対策遅れ、原発停止へ 期限延長認めず 規制委方針 原子力規制委員会は24日、建設が遅れている原発のテロ対策施設について、設置期限に間に合わない原発に対し、運転停止を求める方針を確認した。」との記事が掲載されています。
 この報道が有っても、アメリカやヨーロッパでは、原発に対するテロの危険性は大きいが、日本の場合には今まで発生した事例から、テロ対策についてはあまり大した問題とは思われなかったようです。
 しかし、「特重施設」(「特定重大事故等対処施設」)をこれまで原子力規制委員会や電力会社がテロ対策設備と度々強調してきたのには、もっと大きな理由が有ると思われます。

◎ 元々、シビアーアクシデントは、原子力規制委員会は過酷事故と呼んでいました。
 しかし、過酷事故という言葉は、国民を刺激しすぎるという事で、重大事故に変更されました。
 そしてシビアーアクシデントとは、その本来の意味は beyond design basis accident(設計基準外事故)です。
 商業用原発が建設されるようになった時、原子炉に実際にメルトダウンが起きるとは考えられていませんでした。そのために、メルトダウンが起きた時に起こる不具合については、設計時には全く考慮されていませんでした。
 しかし、スリーマイル島原発とチェルノブイリ原発にメルトダウン事故が発生し、原発の設計には、メルトダウン発生時の事を考慮した対策が必要な事が分かりました。
 「特定重大事故等対処施設」とは、正確にはその対策の為の設備です。
 その中で、建設に膨大な金額と、長期の建設時間がかかる物が、「特定重大事故等対処施設」です。これらの設備は、又日本の原発に何かの理由で、メルトダウンが発生した時、放射性物質が大気中や海中に大量に飛散する事を防止するための最も重要な設備です。

◎ 2001年9月11日にアメリカで同時多発テロ事件が発生しました。
 この事故を受けて、アメリカでテロ対策新基準として、秘密基準の「B・5・b新基準」が策定されました。このアメリカでテロ対策新基準は公開されていませんが、この中に第二制御室も含まれていると言われています。
 それらを参考にし、原子力規制委員会は、「特重施設」を「テロ対策設備」と説明し、国民に秘密にして良い事にしました。
 そのために、原発の事故防止対策で、最も重要な「特定重大事故等対処施設」がブラックボックスになってしまいました。
 今、「特定重大事故等対処施設」の公開を求め、現在の原発の再稼働が如何に危険な状態なのかを明らかにできれば、現在再稼働している原発の運転を止める大きな力となると思われます。

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