[2021_02_10_06]【中間貯蔵施設】最終処分へ準備始めよ(2月10日)(福島民報2021年2月10日)
 
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【中間貯蔵施設】最終処分へ準備始めよ(2月10日)

 東京電力福島第一原発事故に伴う中間貯蔵施設への除染廃棄物の輸送について、環境省は二〇二一(令和三)年度中に帰還困難区域を除いた県内の除去土壌の輸送完了の見通しを示した。帰還困難区域内の特定復興再生拠点区域(復興拠点)からの搬入も始まる。ただ、県内の除染にはいまだ不確定要素が残るほか、最大の課題となる県外最終処分の期限までは三月で二十四年となる。受け入れ先の選定に早急に取り組むべきだ。
 中間貯蔵施設には県内五十二市町村から一千万立方メートルを超える除染廃棄物が運び込まれている。輸送対象総量約千四百万立方メートルの七割に当たる。二〇二一年度は復興拠点を含む十八市町村から約二百五十立方メートルを搬入する計画で、一日千五百往復の車両運行を見込む。これまで県内各地からの輸送に大きなトラブルはなく、今後も安全最優先で作業に当たってほしい。
 輸送対象総量との比較では、除染廃棄物の搬入は最終段階のように見えるが、総量に含まれない除染作業が続く。現在、県内ではため池の除染が進行中で、復興拠点からは累計で百六十万〜二百万立方メートルの除染廃棄物が発生するとみられる。さらに、帰還困難区域を抱える自治体が求める区域内除染が決まれば、最終的な搬入量は膨れ上がる。
 環境省は二〇二一年度分の搬入は可能とみているが、想定される搬入分を含む用地確保は当面の懸案と言えよう。
 一方、最大の課題となる県外最終処分に向けた具体的な動きが出ていないのは、地元としては納得がいかない。「中間貯蔵開始後三十年以内に完了する」との県外最終処分の約束は、中間貯蔵・環境安全事業株式会社法に定められている。中間貯蔵施設への搬入は二〇一五(平成二十七)年三月に始まっており、二〇四五年までには県外処分を終えなければならない。
 県外搬出に至るまでには、輸送方法や受け入れ先での保管や利用など、具体的に決めなければならない項目が多くある。何よりも除染廃棄物に対する国民理解がなければ、最終処分はおぼつかない。
 昨年秋に開館した双葉町の東日本大震災・原子力災害伝承館や町産業交流センターからは、除染廃棄物が積み上がった中間貯蔵施設の状況が一望できる。県外最終処分への理解を広げるため、視察や教育旅行のコースに加えるのも一案だろう。県内の除染廃棄物を一手に引き受ける中間貯蔵施設は、大熊、双葉両町の大きな負担によって成り立っていることを忘れてはならない。(安斎 康史)
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