[2021_03_17_05]柏崎刈羽原発 検査官が明かした特別指示の「抜き打ち検査」(毎日新聞2021年3月17日)
 
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柏崎刈羽原発 検査官が明かした特別指示の「抜き打ち検査」

 東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)で発覚した最悪レベルの核セキュリティーの不備で、原子力規制庁が不備を発見したのは「抜き打ち検査」だった。柏崎刈羽原子力規制事務所の渡辺健一所長が17日、毎日新聞の取材に応じ、自ら抜き打ち検査をしたことを明らかにした。【内藤陽】
 渡辺氏によると、実施したのは2月21日午後9時。日曜日の夜だった。東電はこの2日前に「核物質防護規定違反の可能性がある複数の事案を規制庁に報告した」と公表したが、詳細は明かしていなかった。
 原発の核セキュリティーに関する検査は、本庁の検査官が出張して担当するのが通例だ。規制事務所員は専門の訓練を受けていないためだ。だが、事態を重く見た原子力規制委員会の更田豊志委員長から渡辺氏に「休日、夜間に生の現場の状況を見てほしい」と特別な指示があった。
 渡辺氏は別の検査官と共に2人で、日曜夜に突如、柏崎刈羽原発を訪ね、抜き打ち検査を実施。現場の状況を写真に収め、本庁に報告した。
 渡辺氏は「警備が手薄になりがちな休日の夜にあえて行って(現場を)見た。詳細は話せないが、東電が講じた代替措置には実効性がなく、複数箇所で長期間、不正侵入を検知できない状態だったと分かった」と話す。
 これを可能にしたのが、2020年4月に本格導入した新検査制度だ。検査官には時間や場所の制約を受けずに、原発構内を検査できる「フリーアクセス」が認められている。突然の「抜き打ち検査」は現地の検査官ならではのもので、移動を伴う在京の本庁検査官にはなかなか難しいという。
 更田氏は3月16日夕の記者会見で、抜き打ち検査をしたことを明かし「新検査制度の下で、いつでも検査に行って確認できるようになった効果の一つだ」と述べた。

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 東電は16日夜、「大変重く受け止める。故障した核物質防護設備はすでに全ての箇所が復旧しており、故障が新たに発生しても、実効性ある代替措置が実施できる態勢を構築している」とのコメントを発表した。
 東電によると、20年3月以降、侵入検知設備の故障16カ所のうち10カ所で代替措置が不十分で、不正侵入が検知できない状態が30日を超えていた。東電広報は「地域、社会に不安、心配をおかけしていることをおわびする」と改めて陳謝した。
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