[2021_03_25_01]柏崎刈羽原発、再稼働遠のく 住民「トラブル隠し変わってない」(毎日新聞2021年3月25日)
 
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柏崎刈羽原発、再稼働遠のく 住民「トラブル隠し変わってない」

 東京電力柏崎刈羽原発のセキュリティー不備を巡り、原子力規制委員会が24日、東電に事実上の「再稼働準備禁止命令」を出す方針を決めた。1年以上、再稼働に必要な核燃料装着ができなくなる見通し。東電が目指す再稼働は遠のくばかりだ。【内藤陽、井口彩】
 「設備は復旧しているけれども、今の時点で柏崎刈羽の核物質防護が弱くなっていないとは言えない。(核燃料を)移動させないのが防護として有効だ」。更田豊志委員長はこの日の記者会見で、命令の意図をこう説明し、東電に対する「ペナルティー」ではないと強調した。
 だが東電にとっては、結果として早期再稼働の可能性を法的に断たれたことになる。規制委によると、東電はセキュリティーの不備に関し、約半年間かけて報告書を規制委に提出する必要がある。さらに規制委の追加検査にも1年以上かかる。これが終わらなければ核燃料を装着できない見通しになった。

 ◇トラブル隠し「変わってない」

 地元の反原発団体「原発を再稼働させない柏崎刈羽の会」事務局の竹内英子さん(51)は「ステップとしてはいいと思う」と評価。その上で「規制委はしっかり追加検査し、事実関係や問題点、原因などをつかんだ上で、改めて東電の処分を検討してほしい。(核物質防護問題が)住民に何の説明もなくチェックもできない状態で将来、再稼働に進んでしまうことを心配している」と話した。
 柏崎刈羽原発の再稼働に反対する市民団体代表の桑原三恵さん(73)=新潟市西蒲区=は「3年以上誰でも出入りできる状態で放置されたり代替措置がお粗末だったりと、東電の企業体質は2002年のトラブル隠しから変わっていない。東電には原発を運転する資格がなく、規制委は設置許可を取り消すべきだと思う」と話した。
 花角英世知事は報道陣の取材に「東京電力の原因究明が終わっていない段階で(行政処分など)何らかのアクションを出すというのがどういう考え方なのか、よく分からない」と疑問を述べ、「規制委や規制庁と面会したときに(意図を)尋ねたい」と話した。「今回の処分は十分なものか」との質問には「(規制委の)考え方が分からないので今の段階で申し上げられない」と回答を避けた。

 ◇「厳しい審査を」 意見書案に賛成 県議会3会派表明

 県議会はこの日の議会運営委員会で、厚生環境委員会が提出した「東京電力の適格性について厳しい審査を求める意見書」案について、3会派が賛成を表明した。東電の技術的能力の有無が問われる事態だとして、国会や政府に対し厳しい審査を要望するもの。25日の2月定例会最終日で可決される見通しだ。
 柏崎刈羽原子力規制事務所の渡辺健一所長はこの日の定例記者会見で、担当外だったテロ対策などのセキュリティー関連の検査にも、今後は関与していく考えを示した。渡辺氏は「安全だろうとセキュリティーだろうと、事務所の役割として住民から求められているものなので改善していきたい」と話した。

 ◇社長を参考人招致へ 県議会決定「しっかりただす機会」

 東京電力柏崎刈羽原発のセキュリティー対策に不備があった問題を受け、県議会は24日の議会運営委員会(議運)で、東電の小早川智明社長を県議会連合委員会に参考人招致することを全会一致で決めた。4月中にも開催し、一連の不祥事の経緯などについて説明を求める。
 議運で自民の皆川雄二氏が「県民の生命・財産を守る上で見過ごせない重大な問題だ」と提案した。柏崎刈羽では2002年に発覚した東電のトラブル隠しでも社長や副社長を参考人招致しており、「小早川社長をはじめとする東電幹部の出席を求め、可及的速やかに連合委を開催し、しっかりただす機会を設ける必要がある」と主張した。
 一方、議運に出席する未来にいがた、リベラル新潟の2野党は、原子力規制委員会や規制庁の招致も併せるべきだと提案。自民側はこれに対し「4月に開催することが最善で、まずは社長を招致したい。招致しないと言っているわけではない」とし、今回は保留した。
 県議会事務局によると、県議会での参考人招致は、フェリーの購入トラブルのあった日本海横断航路事業の関係者を招いた16年以来になる。【井口彩】
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