[2021_04_27_01]チェルノブイリ 事故前からトラブル相次ぎ隠蔽も 機密文書公開(毎日新聞2021年4月27日)
 
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チェルノブイリ 事故前からトラブル相次ぎ隠蔽も 機密文書公開

 旧ソ連(現ウクライナ)のチェルノブイリ原発事故から35年となった26日、情報機関のウクライナ保安庁は事故に関する機密文書の一部を公開した。インタファクス通信などが報じた。同原発では事故前からトラブルが相次ぎ、危険性が報告されていたが、パニックを起こさないよう隠蔽(いんぺい)されていた可能性があるという。
 公開されたのはソ連の情報機関・国家保安委員会(KGB)の報告書など。1986年4月に4号機の爆発事故が起こる前の82年に1号機で放射性物質が大量に漏れ出す事故があったが、「パニックや扇動を起こすうわさを禁じる措置」が取られた。84年にも3号機や4号機でトラブルがあったという。
 83年にはソ連指導部に対し、チェルノブイリ原発が「安全装置がなく、ソ連でもっとも危険な原発の一つ」であることが報告され、「事故が起こった場合の放射能は広島や長崎に落とされた原爆の60倍以上」という推計も伝えられた。
 事故後も隠蔽工作は続き、86年7月には、事故原因や大気に放出された放射性物質の構成、傷病者の統計などの詳細を秘匿にする指令が出された。翌年には、フランスの記者が持ち出そうとした原発周辺の土壌や水を、汚染されていない土や水に取り換えるための特殊作戦も行われたという。
 チェルノブイリ原発では86年4月26日、試験運転中の4号機が爆発して大量の放射性物質が飛散し、周辺の住民ら数百万人が被ばくしたとみられる。4号機は現在、鋼鉄製のシェルターで覆われているが、周辺地域の立ち入り制限は続いており、ウクライナ政府は廃炉作業が2064年までかかるとみている。【前谷宏】
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