[2021_05_09_01]「地震が増えた地域」徹底調査! 北海道、伊豆諸島、沖縄…懸念されるM8クラスの可能性は?〈dot.〉(アエラ2021年5月9日)
 
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「地震が増えた地域」徹底調査! 北海道、伊豆諸島、沖縄…懸念されるM8クラスの可能性は?〈dot.〉

 日本各地で大きな地震が起きている。1日に宮城県で震度5強の地震が起き、6日には熊本県で震度4の地震が続いた。どの地域で地震が増えているのか。AERAdot.編集部では各地の地震の回数を集計、増加した地域をランキングにまとめた。

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 「あのときはびっくりした。ウチに被害はなかったけど、お店のものが倒れたり、家にひびが入ったりしたところがありました」
 こういうのは伊豆諸島にある利島村(東京都)に住む60代の女性だ。昨年12月に震度5弱の地震が襲った。その後、地震が続いたが、いま落ち着いているという。
 「大地震の前触れじゃなければいいけど。東京とかで大きな地震が起これば、船がこっちまで来なくなったりするでしょうし、心配です」(先の女性)

■東日本大震災の余震

 いま日本の各地で気になる地震が起きている。どこで地震が増えているのか気になるところだ。
 そこで編集部では、気象庁の「震度データベース検索」を使って、各自治体の2020年4月から今年3月までに起こった地震の回数を集計。下半期の地震の回数から上半期の地震の回数を引き、「半年間で地震の回数が増えた自治体」をまとめた。
 東日本のランキングを見てみると、上位には東北地方の自治体が多く並ぶ。最も多かったのは田村市(福島県)で74回。相馬市(同)が73回、浪江町(同)が70回と続いた。山元町(宮城県)が54回、一関市(岩手県)が39回などとなっている。東北大災害科学国際研究所の遠田晋次教授(地震地質学)は「東日本大震災の余震が続いているが、活動が活発になっている」と見る。
 大きな地震も起きている。
 今年2月13日には福島県沖を震源とするマグニチュード(M)7.3、震度6強の地震があった。3月20日には宮城県沖でM6.9、震度5強の地震も起こっている。東日本大震災が起き、プレートの歪みが解消されているはずだが、何が起こっているのか。
 遠田教授はこう警鐘を鳴らす。
 「歪みが解消されたところもあれば、逆に歪みが大きくなっているところがあるのでしょう。東日本大震災級のM9の地震が再び起こることはほぼ考えられないが、M8級の地震は可能性がある。M8.5となれば、起きる場所によっては再び大きな津波が福島原発を襲うことも否定できません」

■北海道東部の「懸念」

 東北以外では、冒頭の利島村が37回、新島村(東京都)が21回と上位に入った。いずれも伊豆諸島にある自治体で、昨年12月に起きた地震で回数が増えた。プレートがぶつかり合う場所で、もともと地震が多い場所でもある。
 函館市(北海道)でも18回と増加していた。北海道では気になる現象も起きている。火山である十勝岳では20年6月、20年ぶりに火口付近が明るく見える火映が観測された。その後も時折、火映が見られている。また、3月には有珠山でも火山性地震が起こっている。
 この地域でいま最も懸念されているのが、北海道東部を襲う巨大地震だ。東北で東日本大地震を引き起こした日本海溝から北上すると、十勝沖、根室沖などに千島海溝がある。この千島海溝でこれまで大きな地震が起こっていたことがわかってきている。
 政府の地震調査委員会によると、M8.8程度以上の地震が、今後30年以内に7〜30%の確率で起こるという。想定では高さ30m弱の津波が来るともされる。
 西日本のランキングを見ていこう。和歌山市(和歌山県)が23回と最も多く、それに湯浅町(同)が19回と続いた。今年2月には県北部を震源とする震度4の地震が和歌山市であり、市議会の天井から照明器具が落ちるなど、被害があった。もともと小さな地震が頻繁に起きる地域でもあり、「地震の巣」とも言われる。
 その他には嘉島町(熊本県)が13回、宇土市(同)と宇城市(同)が11回など熊本県の自治体が続く。今年3月には震度4の地震が宇土市などで起こった。16年に起こり大きな被害をもたらした熊本地震の余震と見られる。

■「少ない=安全」ではない

 地震が増えていないからといって、安全ということはない。例えば、沖縄県は今回のランキングには出てこないが、大地震のリスクが指摘されている。
 沖縄県の南東沖には琉球海溝があり、北西には沖縄トラフがある。江戸時代にはM7.4の八重山地震津波があり、住民約1万2千人が溺死したと言われる。1938年に宮古島北方沖で起きた地震では地震発生の約10分後、宮古島に高さ約1.5mの津波が押し寄せ、被害を生じさせている。
 県では最大でM9.0の地震が起きると想定。大きいもので30mを超える津波が襲来し、県面積の1割以上が浸水すると見ている。沖縄では海溝までの距離が近く、津波が到達するのも早い特徴がある。琉球大の中村衛教授(地震学)はこう語る。
 「沖縄では長い間大きな地震がなく、『安全だろう』と思っている人も多いが、決してそんなことはない。直下型の大きな地震が起きることもありえる。地震が増えているから危ない、減っているから安全と言えるものではありません」
 地震はいつどこで起こるかわからない。折につけ大地震への備えを進めよう。(AERAdot.編集部・吉崎洋夫)
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