[2021_06_14_03]東電柏崎刈羽原発の再稼働はできない 東電の管理能力崩壊(上)(2回の連載) 「命よりも金」の「東電体質」 原発の設置許可を取り消すべき 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ舎2021年6月14日)
 
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東電柏崎刈羽原発の再稼働はできない 東電の管理能力崩壊(上)(2回の連載) 「命よりも金」の「東電体質」 原発の設置許可を取り消すべき 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

見出し紹介
1.未完成の柏崎刈羽原発を再稼働?
2.福島第一原発の津波想定推移
(下)に掲載
3.「東電体質」のまま原発を動かさせるのか
4.「命よりも金」の「東電体質」

1.未完成の柏崎刈羽原発を再稼働?

 東京電力は6月11日に、柏崎刈羽原発7号機の安全対策工事で新たに72カ所で工事が未完了だったことを明らかにした。これで未完了は全部で89カ所にも上るという。
 新潟本社の橘田昌哉代表と石井武生所長が記者会見で陳謝したというが、現場のレベルではない。東電本店にも管理能力が無いことを露呈した。
 その柏崎刈羽原発は、こうした問題が明るみに出ていなければ今ごろ燃料を装荷して最終の使用前検査を実施していたかも知れない。
 その時には工事未了箇所が100箇所近くもあったことになる。いったい安全対策とは何のために行うのか、誰が責任を負っていたのか。もし再稼働をしていたらと考えると恐ろしい。

 もともと柏崎刈羽原発は、可燃性ケーブルと不燃性ケーブルが混在していて、これを分離できていないことが発覚し、工事のやり直しを規制委に指示されたこともある。
 また、7号機へ送る電源ケーブルを収納していた洞道で火災が発生したこともある。
 ケーブル火災は原発にとって極めて危険な事故だ。その対策は運転していない段階でも速やかに実施されていなければならない。
 運転していない時でも使用済燃料プールの冷却用ポンプなど多くの設備で電力を大量に使っている。

 これら動力系のものだけでなく、気体や液体の放射性物質を監視するモニター類も沢山有り、それらは計装系の電源を常に必要としている。
 これら電源を失えば、直ちに原子力非常事態宣言をしなければならないこともある。
 それほど重大な設備の防火工事が終わっていなかったなどと、およそ考えられないことだ。
 それでも新規制基準適合申請は通り、東電は運転の是否を巡り自治体へと攻勢に出ている。いったい何のつもりだろう。

2.福島第一原発の津波想定推移

 3.11の前に福島第一原発では、6.1mの津波を想定していた。
 そのため15.7mの津波に水没し、原子炉3基の同時メルトダウンという史上最悪の事故を引き起こした。
 最悪というと「チェルノブイリ原発のほうが甚大」と指摘されるかも知れない。

 確かに放射性物質の拡散、直接人的被害の大きさ、影響を受けた国の多さなど、原子力災害としてはチェルノブイリ原発事故のほうが大きいが、後始末を考えれば3基3様のメルトダウンと、複雑に崩れ落ちた建屋の様相、そして汚染水の継続的発生など、チェルノブイリ原発よりももっと深刻な事態になっている。

 津波の想定は、何年も前から規模をかなり正確に捕まえていた。決して想定を遙かに超える「異常に巨大な天災地変」(勝俣恒久元東電会長)ではなかった。
 福島第一原発が建設された時点(1965年)では、3.122mの津波しか想定されていなかった。これは、1960年のチリ地震津波をもとに算出されたものだった。

 その後の推移は、1994年に3.5m(北海道南西沖地震を踏まえた見直し)に引き上げられた後、1997年には当時の通産省が解析値の2倍の津波高さとなった場合の評価を要求し、1998年には4.7〜4.8m(太平洋沿岸部地震津波防災計画手法調査に基づく)そして2000年に10m(解析値の2倍を仮定)これにより通産省へは「海水ポンプが停止する」と報告した。

 2002年に想定を5.7mとしたが、これは土木学会原子力発電所の津波評価技術に基づく評価手法によるものだった。
 その後、2006年には14m(5号機敷地高さ+1mを仮定)を想定し、電源設備が水没すると国へ報告している。
 2007年には福島県の防災上の津波計算結果5mに基づき5.7mと想定。
 2008年には茨城県の防災上の津波計算結果4.7mに基づき5.7mで想定を変えず。
 そして、2008年に地震本部の見解を踏まえた東電設計による試算で15.7m、これは明治三陸沖地震の波源モデルを福島県沖海溝沿いに移動して算出したものだった。

 その後も貞観津波投稿予定論文(いわゆる佐竹論文)に基づく試算が2008年に実施され津波想定は8.9〜9.2mとされた。
 ところが耐震バックチェック随伴事象として再評価する際の津波想定は2009年の段階でも依然として6.1mに留まっていた。これは土木学会原子力発電所の津波評価技術に基づき最新知見で計算したものだった。
 東電自らが試算を行い、実際の津波に近い「15.7m」を、少なくとも2008年には想定していた。経営陣はこれを前提に津波対策をすべきだったし、それをしなかったことが「任務懈怠」(やるべき義務を果たさなかった)として刑事(業務上過失致死傷罪)、民事(株主代表訴訟や各地の生業訴訟等)裁判で争われている。 (下)に続く
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