[2021_06_15_04]東電柏崎刈羽原発の再稼働はできない 東電の管理能力崩壊(下) 「命よりも金」の「東電体質」 原発の設置許可を取り消すべき 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ舎2021年6月15日)
 
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東電柏崎刈羽原発の再稼働はできない 東電の管理能力崩壊(下) 「命よりも金」の「東電体質」 原発の設置許可を取り消すべき 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

3.「東電体質」のまま原発を動かさせるのか

 東電は福島第一原発事故を教訓に、再び原発災害を引き起こさないとして、規制委に柏崎刈羽原発の再稼働適合性審査を申請した。
 他の電力会社と異なり、規制委は東電には「原発を運営する適格性があるか」を合わせて審査した。
 しかし規制委が柏崎刈羽原発の再稼働を許可したということは、この適格性もあるとして許可をしたことになる。
 鳴り物入りで「適格性の有無」まで見としておきながら、許可を出した直後に柏崎刈羽原発では、事件が多発しているのはどういうことか。規制委には答える責任がある。
 例えば「現場職員の安全確保に関する意識調査の結果」として、2018年7月にわずか2日間だけ行われた柏崎刈羽原発の現場職員に聞き取り調査を行ったようだが、次のようにまとめられている。
 「現場の職員は、協力企業を含めて福島第一原子力発電所事故の責任の重さ及び重大さを極めて深刻に受け止めていた。二度と事故を起こしてはならないという決意と自覚をもって、謙虚に研鑽を積む姿勢が見られた。事故の収拾に関わった職員は、様々な機会を捉えて、自らが体験した恐怖や深刻な体験を後進に伝える工夫をしている。」
 「所長は事故前の東京電力のマネジメントシステムを正確に認識し、自ら厳しく反省していた。また、事故やトラブル時の対応では、本社の指示ではなく自らの判断と責任で対応する考えであるなど、福島第一原子力発電所事故の失敗を改善していく決意がある。」
 「福島第一原子力発電所事故の失敗体験は柏崎刈羽原子力発電所の職員一人一人にとって重い教訓となっており、個々人の職責を越えて、原子力安全文化の向上に努力していることが確認された。」
 この結果と、現実に起きている柏崎刈羽原発の事件とは、どのように整合するのだろうか。
 結局は、規制側は事業者からみて御しやすい。僅か2日間の調査に応対しただけで意図した評価を得ることはできるのだろう。
 実際に、セキュリティシステムの不備は現地の検査官が事前の連絡なしに抜き打ち検査で発見したとされている。
 そうした検査を積み重ね、東電の体質を踏まえて問題点を発見しなければ本当の規制はできない。

4.「命よりも金」の「東電体質」

 「原子力事業については、経済性よりも安全性追求を優先しなくてはならない。」と規制委は基本的考え方を示している。
 しかし東電は依然として「安全よりも金」である。
 柏崎刈羽原発の再稼働については1月13日に「安全対策工事が12日に完了した」と発表し、「使用前事業者検査」を進めて3〜4月には原子炉に核燃料を装荷し起動を伴う全ての検査を6月までに終える計画としていた。
 この段階で、新潟県の同意はもちろん、3つの検証作業、「福島第一原発の事故原因の検証」、「原発事故が健康と生活に及ぼす影響の検証」、「万一原発事故が起こった場合の安全な避難方法の検証」は終わっていない。それを無視して原子炉に燃料を装荷したら、事実上運転時と同様のリスクを持つことになるから、約束違反である。
 このような前のめりの姿勢は、明らかに「安全よりも金」である。
 不祥事発覚により再稼働は出来なくなったが、これにより東電が策定していた三カ年の中期経営計画に大きな影響が出ているという。
 燃料移動を禁止する行政処分で再稼働が不可能となったことで、2024年3月期まで再稼働しない場合は、連結経常利益は仮に今年の春に稼働した場合と比べ2023年3月期で450億円、2024年3月期で750億円減るという。(日本経済新聞4月26日)
 柏崎刈羽原発を再稼働した場合を想定すること自体、極めて不当な圧力を地元自治体に与えることになる。
 当然、地元の経済界は再稼働を前提として利益を見込み、それを元に自治体側に再稼働を認めるように圧力を掛けるからだ。
 さらに、東電の社内でも大きな圧力要因になる。
 再稼働が出来なければ東電の利益が圧縮され、金融機関からの借入にも影響を与える。新しい事業に投資も出来ないことになる。そのため経営責任が問われることになる役員は、従業員に圧力を掛けるだろう。そのため本当は終わっていない工事を終わったことにする、評価をしたらリスクが見つかっても報告しない。そういう事件を引き起こしかねない。
 そのうえ、責任を取らない経営陣、東電に原発を推進させながら責任を持たない政治家などの存在が、「東電体質」を温存し、拡大し続けてきたのだ。
 それに対する反省もないから、飽きもせず同様の事件を繰り返し引き起こしていることに、そろそろ規制側が明確な判断をすべきである。
 すなわち、原発の設置許可を取り消すべきだ。
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