[2021_07_01_01]原発事故の賠償金10兆円超す 時効消滅にらみ請求急増か(河北新報2021年7月1日)
 
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原発事故の賠償金10兆円超す 時効消滅にらみ請求急増か

 東京電力は30日、福島第1原発事故の被害者に支払った賠償金の総額が10兆円を超えたと明らかにした。オンラインで開催された原子力損害賠償紛争審査会(原賠審)で説明した。事故10年を経ても請求件数は増え続けており、2年後の開始を見込む処理水の海洋放出に伴い、さらに膨らむと懸念される。
 内訳は、主に避難指示区域で暮らしていた個人の精神的損害や財産被害への賠償が3兆2149億円、自主避難者に3537億円、法人・事業主などには6兆3029億円。他に当面の生活資金となった仮払金1536億円を計上し、総額は10兆251億円に及ぶ。
 請求権を行使していない個人は5月末現在で723人。個人への賠償は減少している一方、近年は国が一時的に立て替えた除染費用の賠償が増えている。
 賠償請求権は、特例法で「損害および加害者を知った時」から10年となっている。請求権が順次、消滅時効を迎える中、裁判外紛争解決手続き(ADR)の3月の申立件数は昨年比2・3倍に急増した。
 東電は時効完成後も賠償に応じる方針だが、法的拘束力はなくなるため、被害者が請求を急いだとみられる。1〜5月に申し立てられた666件のうち半数は「初回」で、被害の長期化も浮き彫りとなった。
 今回の原賠審は政府が4月に処理水の処分方針を決定後初めて開かれた。賠償指針の取り扱いが注目されたが、会長の内田貴東京大名誉教授は「風評被害の賠償は基本的考え方が既に示されている」と言及。「見直しを検討する必要が生じた場合は審議し、判断する」と述べるにとどめた。
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