[2021_07_20_04]東京電力はなぜ原発を動かしてはいけないのか 根深い東電体質の危険=「組織内で情報共有がうまくいっていない…」 それが福島第一原発事故を招いたことは東電自ら認めている (上) (2回の連載) 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ舎2021年7月20日)
 
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東京電力はなぜ原発を動かしてはいけないのか 根深い東電体質の危険=「組織内で情報共有がうまくいっていない…」 それが福島第一原発事故を招いたことは東電自ら認めている (上) (2回の連載) 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

1.柏崎刈羽原発の再稼働は当面止まったが…

 原発問題を考える時に絶対無視してはならない「東電体質」とは何かを考察する。
 現在、東電は規制委員会による特別検査を受けている。
 いわゆる「東電不祥事」とは、2002年の点検記録偽装発覚(2000年の内部告発に端を発する。当時、世界にも例を見ない福島第一原発1号機の運転停止命令が出ている)から始まり、全17基の原発が全て止まる2003年まで、様々な事案が立て続けに発生した一連の出来事を指す言葉だが、その後2007年に中越沖地震が発生し、東電の経営状態は深刻な危機に陥った。
 この頂点に位置づけられるのが福島第一原発事故(原発震災)だ。
 この経緯を繰り返したことで、何度も会社の改革を掲げ、経営陣の刷新などもあった。
 しかし、その裏では2008年に日本海溝沿いの巨大津波の発生可能性が地震調査研究推進本部の長期評価で明らかにされても、巨額の費用と長期の原発停止を嫌った経営陣の判断で対策が先送りされていた。(当事者の旧経営陣は否定しているが)
 裁判でも明らかになったこととして、日本で最も信頼の置ける地震学者の集まりとされた地震本部の結論を先送りする理由付けとして、畑違いの土木学会津波評価部会に福島県沖海溝沿い領域における地震の取扱について検討を依頼したのが2009年6月。
 これで現場が考えていた福島第一原発への最低限の津波対策工事は先送りされた。
 これは現在の東電の見解としては「津波は来ない(来ると考えたくない)と思い、思考停止した」と総括されている。
 しかし今の東電が行っていることが、本質的には変わっていないことが日々実証されているのである。

2.柏崎刈羽原発再稼働に前のめりになり自滅

 柏崎刈羽原発の再稼働に関連して、新潟県は「三つの検証作業」が終了するまで県としては再稼働の議論に入らないとしている。
 しかし東電は前のめりに再稼働への準備作業を進め、今年になって急加速させていた。
 そのさなか、敷地境界に設置されている侵入防止装置の破損やID不正使用問題が発覚し、原子力規制委員会(規制委)により核燃料の移動禁止措置、つまり事実上の再稼働禁止処分を受けた。
 東電現場職員から経営陣に至るまで、意識構造が再稼働ありきへと突き進む中で発生した。
 また、安全対策工事の一部が完工していなかったにもかかわらず、完了したとの発表を行い、後に撤回している。
 工事が終わっていなかった箇所は89箇所にもなるとされ、その多くは安全上重大な問題を生じる場所にあった。
 完工していなかったことを確認しないで完了していたと判断した理由などは今もはっきりしていない。現場を見ればすぐに分かるものもあることから、そのずさんさは目に余るのだが、誰が完工を判断し発表することにしたのかも明確にはなっていない。
 侵入防止装置の破損は規制委による立ち入り調査の結果判明した。侵入防止装置を復旧する必要性を認識していながら復旧に時間を要していたというのは東電の釈明だったが、代替措置(警備員を配置していた)に対しても実効性がない、不正な侵入を検知できない可能性がある状態が30日を超える箇所が複数あった、等の指摘を規制委から受けたという。
 破損箇所は16箇所に上り、2019年1月から発生していたが、2年ものあいだ不備な状態が続いていた。
 今年1月になって規制庁に初めて報告し、事態が明らかになっている。
 その間にID不正使用も工事未了箇所の放置も起きている。
 報道は時系列を丁寧に解説することがあまりないので、これらが断片的に起きている印象があるが、全体が一体のものとして進行していたのだ。 (下)につづく
         (初出:たんぽぽ舎月刊ニュース7月No307)
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