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[2025_08_08_08]データセンターで電力需要が増えるはずが販売電力量は減少 AIで電気料金も増えるはずがこれも減少 加えて特別損失9000億円を計上し 東京電力第1四半期決算報告 「4〜6月期8500億円の最終赤字」のすさまじい内容 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2025年8月8日) | ![]() |
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参照元
04:00 ※これは8月1日【TMM:No5239】で配信した記事の続きです。 東京電力ホールディングス株式会社(以下「東電」)は7月31日に「2025年度第1四半期決算(2025年4月〜6月)」を発表しました。 柏崎刈羽原発を再稼働することに資源(人・もの・金)を投入し続け、挙げ句に顧客を失い続けた結果、将来を見失った巨大電力会社の哀れな現実です。 原発再稼働を叫ぶ人々は、この現実をどのように解釈するつもりでしょうか。 https://www.tepco.co.jp/about/ir/library/results/pdf/2603q1gaiyou-j.pdf 1.販売電力量と料金の推移 ◎巨額赤字の原因は、電力料金収入と販売電力量の減少です。 東電は株主総会で「電力需要の増加見通しといった事業環境変化をビジネスチャンスと捉え、発電、配電、送電効率、電気事業の各施策を連携させながらグループ一体となって取り組み、収益基盤を強化してまいります。」(山口副社長)としていました。電力需要は右肩上がり、収益も増えるので改善は可能だと。 では、実際はどうだったのか。 8月1日の記事と数値は変わりませんが、わかりにくかったので、説明のしかたを変えてみましょう。 販売電力量とは、東電が一般家庭と事業者に直接販売している電力量に加え、卸電力として市場で売り渡している分をも含みます。決算報告では、その第一四半期つまり4月から6月分を去年と比較しています。昨年と今年ではどうなっているのか、ということです。 ◎総販売電力量は481億kWhで前年同期比▲42億kWh、つまり92%に留まっています。逆に言えば8%の減少。気温も高く、景気も回復傾向で、給与水準も2%ほど上昇、電力需要も全国は電力広域的運営推進機関の予測で年率で0.3%(微々たるものだが)増加予想のなかで、東電は見事に大幅減少になっているのです。 そのため、小売販売は386億kWhと前年から▲38億kWh(91.1%)、卸販売も95億kWhから▲5億kWh(95.5%)と、全てがマイナス計上。 1割近い電力料金収入の減少は、この時期が「期ずれ」*の影響で増収になるはずのところで大幅減であることからも、極めて深刻です。*「期ずれ」とは 電力会社の決算における「燃料費調整制度の期ずれの影響」とは、燃料費(火力発電の原油・LNG・石炭など)の実際の支払時期と、料金に反映される時期がずれることにより生じる損益の変動のことを指します。東電の場合今回の決算に置いて「燃料調整制度の期ずれの影響で一時的に利益を確保」とは、「実際の燃料費は下がったが、電気料金はまだ高いまま」なので、利益が一時的に押し上げられた、という意味になります。 2.販売減の原因は何か ◎販売減の要因は、電力需要の減退、節電意識の高まり、競合他社への顧客流出などが影響していると考えられます。 これは、東電が主張し、国も原発再稼動の理由としてきた「生成AIやデータセンターによる電力需要の増大」とは全くかけ離れた姿です。 なお、東電の2025年度の株主総会の議題でもあった「2024年度報告書」によると、総販売電力量2,287億kWhから2024年度は2,286億kWhへと1億kWh(1%)減少していたので、それとも整合的です。この流れは今年の第一四半期でも変わらないどころか拡大していることが明らかになったのです。 ◎料金水準(売上高ベース)を見ると販売電力量は減少していますが、単価維持・調整制度の作用で売上水準はある程度支えられていると見られます。 これは電力料金単価が高止まりしていることを意味しており、消費者は高い電気料金を押しつけられていることになります。当然、顧客を失う結果となっていのです。 そのため販売電力料金も減少し、率を見ると販売電力量より販売電力料金が大きく縮小している結果になるのです。 総販売電力量は8%減少に対し、売上高は4.5%減少ということは、今後期ずれ期間が終わるともっと大きく減少することを意味します。 ◎電気が足りなくなるから原発を、などといっていると、競合他社に顧客を奪われ、原発に巨額の投資を続けることで経営体力も奪われ、その間は国が交付国債等で肩代わりするとしても、いずれは東電が全額返済するべき廃炉費用や賠償金の支払いも、重いツケ払いになってのしかかります。 そうするうちに、再び原発に危機が迫っても、東電は利潤追求のため原発を止めずに乗り切ろうとし、再び原発災害を引き起こす可能性が高まります。 こんな悪循環を断ち切る必要があるので、柏崎刈羽原発再稼働は認めることは出来ません。 3.電力需要は増大するのか 2011年から減り続けコロナ禍の時期には大幅に減少 電力需要が、今後急速に増大するという東電や資源エネルギー庁の「見立て」は、2025年8月になった現段階でも全く実現する気配も見えません。 そもそも、日本の電力需要は、震災の年、2011年から減り続け、コロナ禍の時期には大幅に減少しました。コロナ後は、ほぼ横ばいか微増になっています。 近年、長期的なデフレ傾向が転換しつつあり、名目賃金は上昇していますが、インフレ率の上昇がそれを上回っており、実質賃金はマイナスが続いています。 大企業の収益は好調であっても、家計や中小企業の経済状況は依然として厳しいのが実情です。 このような状況の中で、電力多消費型の産業が大きな利益を上げることは困難です。 生成AIやクラウドサービスの拡大に伴い、データセンターなどの電力需要は国内でも増加傾向にありますが、このような状況で、高い電気代をふんだんに使う産業が大きな利益を上げるとは到底思えないのです。それでもデータセンターだ、AIだと、電力需要は増え続ける見通しが続いています。 それは省エネ、少子高齢化などによる減少傾向と相殺しているのが実情です。 高度経済成長期のGDP比例で電力消費増大というモデルは今では通用しないのですが、かわらずそう主張することで、原発への投資を促進させようとする動きが続いています。 |
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KEY_WORD:データセンタ-AI-原発_:KASHIWA_:廃炉_: | ![]() |
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