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[2025_08_27_03]三菱商事 洋上風力撤退発表 社長「事業計画の実現困難」(NHK2025年8月27日) | ![]() |
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参照元
19:57 大手商社の三菱商事は秋田県と千葉県の沖合で計画していた洋上風力発電についてコストの大幅な増加などを理由に撤退すると正式に発表しました。再生可能エネルギーの普及に向けて国が後押ししてきた大型事業の見直しで、国のエネルギー政策への影響も避けられない見通しです。 目次 中西社長「建設費用は当初見込みの2倍以上」 秋田県知事「よもや撤退ないだろうと 大変な衝撃 」 三菱商事は27日、秋田県の「能代市、三種町および男鹿市沖」と「由利本荘市沖」、千葉県の「銚子市沖」の3つの海域で、中部電力の子会社などと共同で進めてきた洋上風力発電から撤退すると正式に発表しました。 三菱商事などはことし2月以降、資材価格や人件費などの高騰で事業にかかるコストが大幅に増加したとして、計画の見直しを進めてきました。その結果、3つの案件のいずれも採算を確保するのが難しく、開発を取りやめざるを得ないと判断したということです。 今回の計画は再生可能エネルギーの拡大に向けた国の重点的な整備計画の第一弾で三菱商事を中心とする事業体がほかの事業者よりも大幅に安い売電価格を提示して落札していました。 中西社長「建設費用は当初見込みの2倍以上」 三菱商事の中西勝也社長は27日に都内で開いた会見で「プロジェクトを進めることができず断腸の思いだ。地元の皆様から期待や激励をいただいていたが、期待に添えない結果となり心より申し訳なく思っている」と述べました。 その上で、撤退を判断した理由について「2021年に落札して以降、世界的なインフレなどとともに風車メーカーによる値上げなどが重なって、コストが大きく膨らんだ。建設費用は当初見込んだ金額の2倍以上の水準となり、事業期間全体での売電収入よりも保守や運転の費用を含めた支出の方が大きく、事業計画の実現が困難との結論に至った」と説明しました。 計画を立てた際の売電価格などが妥当だったかを問われ、中西社長は「4年前の入札時点で見通せる事業環境に基づいて、十分な採算を確保した上で、売電価格を算出した。決して安値を出したわけではなく、事業環境の激変が今回の結果につながった」と述べました。 さらに、自身の責任について問われると「われわれは計画を断念したが、今後の後継の事業者に対してこれまでのデータの共有などできることをしていく。脱炭素社会の実現のため引き続きやることはあり、社長としての責務を全うしていく」と述べました。 三菱商事は、計画の見直しに伴って昨年度のグループ全体の決算で522億円の損失をすでに計上していて、追加の損失は限定的だとしています。 武藤経産相「洋上風力全体に対する信頼揺るがしかねない」 中西勝也社長は27日午後、武藤経済産業大臣と面会し、「期待に応えられなかったことを重く受け止めている」と述べ、撤退の理由などを説明しました。 これに対し、武藤大臣は「信じられないというのが正直な気持ちだ。撤退の判断に至ったことは日本における洋上風力の導入に遅れをもたらすもので大変遺憾だ。地元の期待を裏切るもので、全国の関係者も大変注目している案件であり、洋上風力全体に対する社会の信頼を揺るがしかねない」と述べました。 国は洋上風力発電を将来の再生可能エネルギーの柱と位置づけ、事業を後押ししてきましたが、今回の大型事業の見直しで国のエネルギー政策への影響も避けられない見通しです。 [建設計画されていた地域 反応は] 秋田県知事「よもや撤退ないだろうと 大変な衝撃 」 秋田県などの沖合で計画されている洋上風力発電について、三菱商事が事業からの撤退を正式に発表したことを受けて、秋田県の鈴木知事は、午後4時半ごろ、秋田県庁で記者団の取材に応じました。 この中で鈴木知事は「極めて残念かつ極めて遺憾だ。国家肝いりのプロジェクトで国を代表する企業が落札して、よもや撤退ということはないだろうと思っていたので、大変な衝撃だ」と述べました。 その上で「三菱商事には説明責任にとどまらず、さまざまな社会的な責任も私はあると思う。しっかりとした対応を求めていきたいと思うし、県としても事業者に寄り添ってこれからしっかり対応していきたい」と述べました。 地元企業 部品受注目指し投資も 部品の受注を目指して新たな投資を行っていた秋田県の企業からは困惑の声が上がっています。秋田県由利本荘市の機械メーカーでは、航空機の部品などを製造していた技術力を生かし、8年前から陸上に設置する風車の部品の製造を行っています。 秋田県の沖合の2つの海域ではあわせて103基の風車が設置される計画だったことなどからこの会社では、洋上風力の分野への参入を目指していました。 ことし2月には風車の発電機を格納する部品の受注を見込んで、大型の加工用機械を導入したということです。 今回の撤退について、齊藤民一会長は「導入した機械は風車以外の部品の製造にも使えるので会社への打撃は大きくはないが、まさか3つの海域すべてから撤退するとは思わなかった」と話しました。 その上で「トランプ関税などもあり、今後、洋上風力を取り巻く環境がどうなるかわからないが、うちのような小さな会社は臨機応変に、自分たちのできることをやっていくしかない」と話していました。 千葉県知事「地元に多大な影響 説明責任を」 千葉県の熊谷知事は「地域経済の活性化のためにも大きな期待を寄せていたので事業者の撤退は大変遺憾だ。地元に多大な影響が及ぶことになるので事業者にはしっかり説明責任を果たしてもらいたい。また、銚子市沖の洋上風力発電事業が一刻も早く進展するよう国は再公募を直ちに実施してほしい」というコメントを発表しました。 銚子市長「再公募手続き 確実に進めて」 銚子市の越川信一市長は「非常に残念で遺憾です。ただ前に進むことが大事なので国には再公募の手続きを迅速かつ確実に進めてもらいたい」と話していました。 銚子市の沖合では、三菱商事などでつくる事業体が国の公募を経て洋上風力発電の建設計画を進め、当初の計画では2028年の運転開始を目指していました。一方、銚子市漁業協同組合は漁業振興を目的にした基金を通じて事業体から毎年3億円を受け取っています。 今回の撤退の発表について漁協の担当者は「基金の一部を漁業者の漁船の燃料代の補助などに使っているが、そうした支援がなくなってしまうのではないかと心配している」と話していました。 [専門家の見方は] 専門家「資材・建材費のインフレ 予想できなかったのでは」 今回の撤退について、エネルギー経済社会研究所の松尾豪代表はNHKの取材に対し「三菱商事は他社よりも非常に低い価格で落札したが、資材・建材費のインフレがこれだけ激しくなることは予想できなかったのではないか。最初の入札で極端に低い価格を提示したことが、その後の事業環境を悪化させているとも考えられ、落札した事業者がまた撤退するという動きが出てきてもおかしくない」と指摘しています。 また、三菱商事が撤退した事業で改めて事業者の公募が行われる場合について「事業の不確実性は全く解消していないと考えられ、今後、応札できる事業者が出てくるかというと、非常に難しいのではないか」と話していました。 その上で今後の国のエネルギー政策に与える影響については「再生可能エネルギーの割合を高めるために洋上風力は切り札とされてきたが、今回、撤退となったことの影響は非常に大きいのではないか」と話していました。 |
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KEY_WORD:風力-発電_:再生エネルギー_: | ![]() |
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