[2017_01_25_01]「もんじゅ」の失敗は原子力政策の失敗 核兵器製造能力保持のため核燃サイクルにしがみつく 渡辺寿子(原発いらない!ちば)(たんぽぽ2017年1月25日)
 
参照元
「もんじゅ」の失敗は原子力政策の失敗 核兵器製造能力保持のため核燃サイクルにしがみつく 渡辺寿子(原発いらない!ちば)


1.国「もんじゅ」失敗認めず

 政府は昨年12月21日原子力関係閣僚会議を開き、高速「増殖」炉「もんじゅ」を廃炉にすることを正式に決定しました。遅きに失したとはいえ、『ムリ、ムダ、キケンだから一日も早く廃炉に!』と訴え続けてきた私たちの願いがやっとかなって喜ばしいはずです。
 ところがコトはそう単純ではありません。国は「もんじゅ」は廃炉にするものの核燃サイクル政策は放棄せず、あまつさえ新たな高速炉開発に着手する方針だというのです。「もんじゅ」のあとの高速炉をどうするかを決めるのは世耕経産大臣が主宰する「高速炉開発会議」です。メンバーは経産大臣以下、松野文科大臣、「もんじゅ」を所管する原子力機構理事長児玉敏雄、電事連会長で中部電力社長の勝野哲、三菱重工社長宮永俊一の5名です。すべて原子力ムラの強力な面々で、たったこの5人で国民の声も聞かず、国会にも諮らず、「もんじゅ」とその後の方針を決めました。
 「もんじゅ」は1兆円超の税金を投入したにもかかわらず、稼働はわずか250日、生み出した電気はほんのわずか、1995年12月8日のナトリウム火災事故以降1kwの電気も生み出さないのに、一日5500万円の維持費をかけて存続させてきました。
 「もんじゅ」は誰が考えても失敗です。原型炉「もんじゅ」が失敗したのに、その先の新たな高速炉の実証炉を計画するなど全く無茶苦茶な話です。

2.再処理工場破綻は隠蔽?

 そもそも日本の原子力政策は高速「増殖」炉「もんじゅ」と再処理工場を要とした核燃サイクル政策を根幹として実行されてきました。「もんじゅ」とならぶもう一つの要、六ヶ所再処理工場も今暗礁に乗り上げています。着工から20年以上経ち、当初予算の3倍以上、2兆円超のお金を投入しました。しかし高レベル廃棄物のガラス固化の工程でつまづき、23回も完工延期して、いつ稼働になるのか全く目途がたっていません。「もんじゅ」と同じくこちらも実質破綻しているのですが、なぜかこちらについては「もんじゅ」ほど大きな問題として取り上げられていないようです。
 しかし、核燃サイクルの二つの要、「もんじゅ」と再処理工場が失敗、破綻したのですから、当然核燃サイクル政策の続行は不可能であり、放棄するしかないはずです。

3.机上の計画ASTRID

 しかしプルトニウム利用、核燃サイクル路線を手放したくない国は「もんじゅ」から「増殖」の看板を取り下げて、高レベル放射性廃棄物の「減容化」目的の高速炉として生き残らせようと画策しましたが、これも実現可能性がないと判断されました。
 また核燃サイクル政策維持の方策としてフランスが進めているとされる「アストリッド(ASTRID)高速炉計画」に参加する方針を打ち出しました。
 しかし、この計画はどこに、何を、誰が作るのかさえ決まっていない全く机上の計画です。

4.再稼働止めることが最善策

 再処理を止め、「もんじゅ」を止めた場合使用済み燃料をどうするかが問題となります。まずは使用済み燃料をこれ以上増やさないために再稼働をすべて止めることです。すでに各原発の燃料プールに貯蔵している使用済み燃料は危険なので、取り出して、空冷の使用済み燃料施設に保管する。六ヶ所再処理工場の一時保管スペースに貯まっている使用済み燃料をどうするかは難しい問題ですが、皆で知恵を絞って行かなければならいでしょう。とにかくこれ以上使用済み燃料を増やさないためにすべての原発の再稼働を止めることが第一歩でしょう。

5.もんじゅ廃炉は核燃サイクル廃止へ

 「もんじゅ」だけで1兆円超、再処理工場に2兆円超、核燃サイクル全体では12兆円という厖大なお金が投入されてきました。「もんじゅ」や再処理工場を止めると、その廃止措置には巨額の税金が必要になります。それはむだ金のようにも思われますが、今後も続けて、使用済み燃料や高レベル廃棄物などの毒物を生み出し続けるよりははるかにましです。「もんじゅ」廃炉に伴う唯一の選択肢は核燃サイクルの放棄であり、再稼働を止めて、全原発の廃止に進むことです。

6.プルトニウムを手放さない日本

 プルトニウムを生産する再処理工場や高速増殖炉など核燃サイクル施設は核武装国以外には認められていません。唯一の例外が日本なのです。
 2018年は日米原子力協定の延長交渉が行われる年です。この延長交渉の最大の問題が日本の核燃サイクル施設がそのまま認められるかどうかです。日本は核燃サイクル施設の保持を権利だとして、この既得権益を守るために必死になるでしょう。

7.「常陽」の復活なぜ企む?
  核兵器級プルトニウム獲得のため

 高速実験炉「常陽」はもともと原子力研究所(原研)が設計した日本独自の高速炉で1977年より1983年に濃縮度99.2%の超高純度プルトニウムを生産しました。その後カーター政権によってプルトニウムを生産するブランケットという燃料体をはずされてしまい、高速中性子炉として中性子照射実験を行っていました。
 2007年装置の部品を炉内に落下させ、ナトリウムの中の部品の回収が困難で稼働中止となっていました。
 ところがこの間の「もんじゅ」廃炉の動きと軌を一にして原子力機構は落下した部品の回収と補修作業を終えたとして、再稼働をめざし今年度中に新規制基準の適合審査の申請を行うというのです。
 「もんじゅ」廃止後の方針として「常陽」の活用がはっきりうたわれました。
 長期停止で「死に体」と思われていた稼働40年の老朽高速炉を復活させる驚きの策動の裏に何があるのでしょう。
 これはもう一つの「死に体」施設「RETF」(リサイクル機器試験施設)を復活させる策謀と結びついているのです。
 「RETF」は「常陽」や「もんじゅ」など高速炉のブランケット燃料体を再処理して核兵器用超高純度プルトニウムを取り出すための施設です。
 「常陽」が生産した純度99.2%のプルトニウム19kgと「もんじゅ」が生産した純度99.8%のプルトニウム17kgの核兵器用プルトニウムを取り出すために国は「RETF」を動かしたいのです。
 「RETF」は1993年から2000年まで800億円かけて建物だけ建設しました。中の機器類はまだ設置されていませんでした。
 「もんじゅ」事故で無用の長物となりましたが、年間2700万円かけて維持してきました。これを完成、稼働させるためには「もんじゅ」廃炉が決定した今、「常陽」を復活させその必要性を訴えるしかないのです。
 核兵器製造に直結する「常陽」と「RETF」の復活を許さず核武装の道を断ちましょう。

8.東海再処理工場の危険性

 「RETF」の巨大な施設は大洗の東海再処理工場の付属施設として建設されました。このことにも命名の問題とともにその正体を隠そうとする意図が窺えます。
 その本体施設の東海再処理工場はすでに廃止が決まっています。所管の原子力機構は廃止完了までに70年以上かかるといいます。
 この施設の現状はひどいことになっています。中身のよくわからない廃棄物の容器なども多くありますが、廃止作業の一番の難題は再処理で出た400立方mもの超危険な高レベル放射性廃液の処理です。地震や津波に襲われた場合の危険性が指摘され、12年半かけてガラス固化完了するとしていますが、この設備は故障が相次ぎ全く予定通り進んでいません
 再処理工場は廃止を決めてもその後始末は相当厄介です。東海再処理工場の廃止でそのことがはっきりしました。
 再処理工場や高速炉など高レベル廃棄物を増やす核燃サイクルはきっぱり止める、そして全原発廃止へつなげることが何より肝心です。

 「原発いらない!ちばネットワークニュース 2017年1月号」より
 了承を得て転載

KEY_WORD:MONJU_:JYOUYOU_:世耕弘成:松野博一:ROKKA_:TSUNAMI_: