[2021_01_26_08]【廃炉の現場】(10)第2部使用済み核燃料 プールの容量限界  議論先送り続く(福島民報2021年1月26日)
 
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【廃炉の現場】(10)第2部使用済み核燃料 プールの容量限界  議論先送り続く

 深さ十一メートルの使用済み核燃料プールに収納用のラックが規則正しく並ぶ。作業員は水面の上にある取り扱い機から、長さ四・五メートルの使用済みの核燃料棒を慎重に移動させる。
 東京電力福島第一原発の原子炉建屋西側の高台にある共用プールに、六千四百七十体の使用済み核燃料が冷却されたまま貯蔵されている。「原子炉建屋から燃料を移すには容量がまるで足りない」。政府関係者は先行きが見えない燃料保管の現状を憂う。
 4号機の燃料の運び出しは既に完了した。今後は1、2、3の各号機だけでなく、建屋に大きな被害がなかった5、6号機からの搬出作業も本格化する。新燃料も合わせて四千五百六十体分が運び出される計画だ。共用プールの空き容量は現在、二百体分にとどまり、共用プール全体のわずか3%にすぎない。

 ■乾式キャスク

 東電の使用済み核燃料取り出し計画によると、二〇二二(令和四)年度に6号機の搬出作業を始める。その後の二〇二四年度から二〇二八年度までは1、2号機を優先し、5号機は合間を縫って作業を進める。
 各建屋から運び出した使用済み核燃料は共用プールで保管した後に、鋼鉄でできた乾式キャスクに移送する。反応しにくいヘリウムガスを注入し、安全な温度とされる四〇〜五〇度ほどの燃料をコンクリート内で空冷し続ける。キャスクの仮保管設備には二千三十体ほどが保管されているが、残り容量は二千体弱で増設は避けられない。
 東電の廃炉中長期実行プランでは、二〇二〇年代前半をめどに新たな仮保管設備を整備する。ただ、共用プールに保管している燃料を受け入れる保管地は二万一千平方メートルもの敷地が必要になる。現在の保管設備の周辺には汚染水に含まれる放射性物質を取り除く設備があり、増設は難しい。
 別の場所に新設する場合、放射性物質トリチウムを含んだ処理水の保管タンクの撤去が必要と見込まれる。処理水の処分方法決定は時期尚早との声も上がる中、敷地確保は不透明な状況だ。

 ■国が責任を

 東電と日本原子力発電の共同出資会社は青森県むつ市に使用済み核燃料の中間貯蔵施設を建設し、二〇二一年度の稼働を目指す。核燃料サイクルの一環で、東電の原発からの燃料受け入れ方針は示されている。ただ、福島第一原発からの搬出について東電は「まずは発電所の敷地内で当面の間安全に保管する」と述べるにとどめている。
 県などは安全上の観点から、事故前から使用済み燃料の県外搬出を求めてきた経緯がある。住民の帰還が本格化する中、県としてのリスクとなる燃料を早期に運び出すべきとの意見は変わらず、「使用済み燃料の処理・管理方法は国が責任を持って決定してほしい」としている。
(第2部「使用済み核燃料」は終わります)
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