[2021_09_07_05]政府の原子力防災会議 島根原発の避難計画などの対応策を了承 (NHK2021年9月7日)
 
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政府の原子力防災会議 島根原発の避難計画などの対応策を了承

 政府の原子力防災会議は、松江市にある中国電力島根原子力発電所で原発事故が起きた場合に備えて、原発から30キロ圏内に含まれる、およそ46万人の避難計画などを盛り込んだ対応策を了承し、菅総理大臣は、円滑な避難に向けた施策を進めるよう関係閣僚に指示しました。
 政府は7日、総理大臣官邸で、原子力防災会議を開き、松江市にある中国電力島根原子力発電所で原発事故が起きた場合に備えて、原発から30キロ圏内に含まれる、およそ46万人の避難計画などを盛り込んだ対応策を了承しました。
 そして、菅総理大臣は「島根地域は、全国で唯一、原子力発電所が県庁所在地である松江市に立地している。避難経路の確保や、他県にまたがる広域的な避難など、地域固有の課題に対応していく必要がある」と述べました。
 そのうえで「国は、万が一の事態が発生した場合にも、国民の命と財産を守る重大な責務を負っている。関係自治体や事業者と緊密に連携し、訓練などを通じて、計画を継続的に検証、改善していくことが重要だ」と述べ、関係閣僚に対し、感染症対策も考慮しながら、円滑な避難に向けた施策を進めるよう指示しました。

島根原発2号機めぐる動き

 松江市にある島根原発は、2号機が今月にも再稼働の前提となる原子力規制委員会の審査に正式に合格する見通しです。
 中国電力は、今年度中に耐震などの対策工事を終える計画ですが、再稼働には地元・島根県と松江市の事前了解が必要で、再稼働の時期は見通せていません。
 そうした中、7日、事故の際に原発周辺に住む46万人近くの避難などをまとめた緊急時対応の計画が政府の原子力防災会議で了承されました。

原発で深刻な事故が起きた場合の避難は

 原発で深刻な事故が起きた場合の避難については、10年前の福島第一原発の事故を教訓に国の指針が見直され、原則、原発から5キロ圏内の人は避難を行い、5キロから30キロまでの間の人は、無用な被ばくを避けるため建物の中にとどまる屋内退避を行うことになっています。
 島根原発は全国で唯一、県庁所在地に立地していて、およそ5キロ圏内に暮らす松江市の1万人近くは、30キロ以上離れた島根県の大田市や奥出雲町へ自家用車やバスで避難することになっています。
 10年前の原発事故では大渋滞が起きるなどして避難が困難になりましたが、今回の緊急時対応では、島根県警の交通管制センターに導入された、避難経路の信号を操作して長時間「青信号」にできるシステムを使い、幹線道路である国道9号などで避難車両を優先的に通行させるということです。
 また、島根県は避難経路や渋滞などの情報を専用のウェブサイトで提供するとしています。

屋内退避の島根・鳥取の人たちは

 5キロから30キロまでの間には、島根県と鳥取県の合わせて45万人近くが暮らし、事故時には原則、自宅や避難所などで屋内退避を行います。
 ただ、各地で行われるモニタリングで放射線量が一定の値を超えた場合、速やかに避難したり、1週間程度の間に移動したりすることになっていて、その場合は島根県や鳥取県のほか、広島県や岡山県への広域避難を想定しています。
 また、屋内退避の指示が出ている間、余震などで建物が倒壊するおそれがある場合は、近隣か30キロ以上離れた場所へ速やかに避難するとしています。

県庁所在地に立地の原発

 全国で唯一、県庁所在地に立地する島根原発。
 島根県庁は原発からおよそ9キロに位置しているため、放射線量が高まって県庁にとどまるのが難しい場合を考慮する必要があります。
 県庁機能を継続するためのBCP=事業継続計画について、島根県は住民の避難を終えたあと、県庁の機能を原発から30キロ程度離れた出雲市内の施設に移転するなどとしています。
 また、国などが事故対応の拠点とするオフサイトセンターも県庁近くにあり、機能できなくなった場合は移転します。

残された課題

 一方で、課題も残されています。
 例えば、屋内退避の指示がいつまで続くのかが明確になっていない点です。
 内閣府では、2019年11月、島根原発を対象に行われた国の原子力総合防災訓練で、訓練に参加した住民にアンケートを行い、874人から回答がありました。
 「災害に備え何日分の食料・飲料などを準備しているか」との質問に対し、「準備していない」が最も多い46.1%、「約3日分」が27.7%、「約1日分」が14.6%などという結果になり、屋内退避のための備蓄が十分だとは言えない状況です。
 緊急時対応では、国や県、それに中国電力などが物資を提供するとしていますが、実態に即した対応ができるのか問われています。
 このほか、自力での避難が難しい人への支援や、自然災害で避難経路が使えない場合の対応県庁やオフサイトセンターの移転作業などで、実効性を高められるか課題が残されています。
 来年2月には、緊急時対応の内容に沿って島根県の原子力防災訓練が行われる予定ですが、継続的な訓練を通じて、課題を抽出して改善し続けることが求められます。
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