[2020_02_20_02]現実味帯びる原発再稼働…避難は!? 女川原発2号機〈宮城〉(仙台放送2020年2月20日)
 
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現実味帯びる原発再稼働…避難は!? 女川原発2号機〈宮城〉

 特集は女川原子力発電所2号機についてです。去年、再稼働審査で事実上の合格となり再稼働が現実味を帯びてきています。一方で住民は避難計画への不安を抱いています。原発事故が起きた場合、安全に逃げることはできるでしょうか?
 女川原発から直線距離でおよそ3キロ。
 牡鹿半島の先端に位置する石巻市の寄磯地区です。
 石巻市寄磯の区長・渡辺洋悦さん(67)が、自宅の冷蔵庫から取り出したのは…。
 石巻市寄磯の区長 渡辺洋悦さん(67)
 「ただ錠剤が入ってるだけ」
 甲状腺被ばくを抑える「安定ヨウ素剤」。
 原発から5キロ圏内に住むおよそ1200人に、石巻市と女川町が配布しています。
 石巻市寄磯の区長 渡辺洋悦さん(67)
 「こういうのを使わないのに越したことはないんだけどね」
 東日本大震災で被災した女川原発2号機。
 震災から2年後の2013年、東北電力は再稼働を目指し安全対策の強化などを求めた新規制基準への審査を申請。
 審議を重ねた原子力規制委員会は、去年11月、「基準に適合」と認める審査書案をまとめました。
 「事実上の合格」です。
 そして、2月中にも、「正式な合格」が出るとみられています。
 石巻市寄磯の区長 渡辺洋悦さん(67)
 「一斉に避難した場合、あの道路ではとても避難することは難しい」
 Q.震災時はどうだった?
 「あの時はね、がれきで道路が寸断した。陸の孤島になってしまった」
 女川原発で重大な事故が起きた場合、避難の対象となるのは、30キロ圏内の7つの市と町の住民およそ20万人。住民たちは自家用車やバスを使って、広域避難する計画になっています。
 しかし、東日本大震災の時、石巻市の中心部へ向かう道路は、土砂崩れやがれきによって至る所で寸断され、住民が一時、孤立しました。
 避難の経路も限られていて、地区の住民およそ200人が一斉に車で逃げると、渋滞する恐れもあるのです。
 石巻市寄磯の区長 渡辺洋悦さん(67)
 「最悪の場合、海上避難を考えている。気仙沼や仙台まで小型漁船で約2時間あれば行けるので」
 寄磯地区には、あの日、高さ10メートルを超える津波が押し寄せました。
 石巻市寄磯の区長 渡辺洋悦さん(67)
 「漁船が70隻くらいと養殖船も多少流された」
 Q.「船での避難を考えている」と…
 「それは津波がない時のこと。複合災害になった場合どのように逃げるか具体的な取り決めは何もない」
 じつは避難計画で想定しているのは、あくまで原子力災害のみで、地震や津波などを伴う「複合災害」への対応は盛り込まれていません。
 また、原発の安全審査とは違い、避難計画は再稼働の条件に含まれていません。
 避難計画は最終的に内閣府が取りまとめ、総理大臣をトップとする原子力防災会議が、了承することになっています。
 村井知事は、県が独自に検証する考えはないとしています。

宮城県 村井 知事 (去年12月2日定例会見)
 「福島第一原発の事故も東京電力と政府が全責任を負っており、福島県には責任を負わせていないわけですので、『責任を負う者が最終的な判断をするべき』だと思います。私か地元の首長が緊急時対応の是非を判断する権限は法的に与えられていない。判断をしてはならないということではなく、もしそういう権限が与えられたならば、私は自分の判断で責任を持ってやりますが、残念ながらそういうルールになっていないので、国のルールに合わせて判断せざるを得ない」

 石巻市寄磯の区長 渡辺洋悦さん(67)
 「本当に真剣に避難を考えているのか、県の方も、国も当然。今の避難計画は“絵に描いた餅”みたい」
 避難の実効性が問われる中、原発の再稼働は刻一刻と現実味を帯びていきます。

仙台放送
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