[2017_08_20_01]島崎証言を無視し,関電に助け船を出し、樋口判決を葬ろうとする裁判所に抗議を 〜基準地震動は過小評価,安全審査は欠陥だらけ,なのに裁判所は審理打ち切り?(福井から原発を止める裁判の会2017年8月20日)
 
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島崎証言を無視し,関電に助け船を出し、樋口判決を葬ろうとする裁判所に抗議を 〜基準地震動は過小評価,安全審査は欠陥だらけ,なのに裁判所は審理打ち切り?


「大きな自然災害や戦争以外で,(人格権の中核部分という)根源的な権利が極めて広汎に奪われるという事態を招く可能性があるのは原子力発電所の事故のほかは想定し難い。...少なくともかような事態を招く具体的危険性が万が一でもあれば,その差止めが認められるのは当然である」
「国民の生存を基礎とする人格権を放射性物質の危険から守るという観点からみると,本件原発に係る安全技術及び設備は,...確たる根拠のない楽観的な見通しのもとに初めて成り立ち得る脆弱なものであると認めざるを得ない」
「たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても,これを国富の流出や喪失というべきではなく,豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり,これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失である」
2014年5月21日,大飯原発福井訴訟の一審樋口判決は,多くの人々の命と生活と豊かな故郷を奪い去った福島第一原発事故の被害と向き合い,人々の命と生活という人格権の中核的部分こそ憲法上最も重要な価値をもつと指摘し,経済性優先で安全を蔑ろにした関西電力の姿勢を断罪して,大飯原発の運転を差し止め,私たちすべてに感動と未来への希望を与えてくれました。
あの判決から3年が経ち,現在も名古屋高裁金沢支部での控訴審が続いています。 控訴審では,島崎邦彦前原子力規制委員会委員長代理が,大飯原発の基準地震動(安全設計の基準となる想定地震動)策定の方法が,政府の地震本部の定めた地震動予測手法にすら反し,大幅な過小評価となっていることを,科学的に明らかにしました。同時に,島崎氏は,関西電力が行った大飯原発の地盤調査が,現在の科学水準からすればあまりにお粗末で,地下の地質構造や断層の状況が分からず,大飯原発を大地震が襲ったときにどのような揺れが生じるかを判断できるようなものでないことも指摘しました。大飯原発の安全設備は,樋口判決が指摘したとおり文字通り「根拠のない楽観」に基づいて設計されていたことが,最高レベルの地震学者の証言で,明らかになりました。関西電力は,島崎証言で文字通り崖っぷちに立たされたのです。
ところが,大変残念なことに,内藤正之裁判長をはじめとした名古屋高裁金沢支部の裁判官らは,島崎証言には何ら関心を示さず,関西電力による地盤調査の杜撰さなど島崎氏の証言を裏付ける重要な事実に関する住民側の証人申請をすべて却下し,11月20日の口頭弁論期日で控訴審の審理を終結して樋口判決を葬り去ろうとしています。真実から目を背け,必要な証拠調べを打ち切って関西電力に助け船を出すような,不公正な裁判所に対し,住民側は同裁判官らの忌避を申し立てましたが,却下され,現在,最高裁に特別抗告中です。
こうした裁判所の異常な動きは,決して金沢だけで起こっているのではありません。全国各地の裁判所で,行政追随を続けて福島原発事故を防げなかったことに対する「司法の責任」は忘れ去られ,規制委員会による問題だらけの安全審査をそのまま追認する,異常な裁判が続いています。そこには,行政に追随せず安全重視を貫いた樋口判決を敵視し,原発裁判を福島第一原発事故以前の「行政追随型」に戻そうとする最高裁の意図が働いています。
こうした状況の中で,法廷の中だけのたたかいで,樋口判決を守り抜くことは,到底困難といわざるを得ません。今こそ,私たち市民一人ひとりが,樋口判決のメッセージと,福島への思い,安全への願いを胸に,裁判所を監視し,包囲することが必要です。
もともと,樋口裁判長は,法廷の中だけで樋口判決が守られるとは考えていませんでした。だからこそ,誰にでも分かりやすい,私たち一人ひとりの胸に響くメッセージを,判決に込めたのです。
皆さん,樋口判決を守る力は,私たち一人ひとりの中にあります。「二度とフクシマを繰り返すな!」「危険な原発の再稼働反対!」「裁判所は住民の人権を守れ!」の思いを裁判所にぶつけ,真実から逃げ回り,不当に証拠調べを拒否して関西電力に助け船を出すような,不公正な裁判のやり方を改めさせ,樋口判決を守り抜きましょう!

福井から原発を止める裁判の会
代表 中嶌哲演(大飯原発差止裁判原告団長)
大飯原発差止裁判弁護団長 島田 広


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