[2021_07_16_03]「原発コスト、廃炉含むと天文学的な数字に」(オルタナ2021年7月16日)
 
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「原発コスト、廃炉含むと天文学的な数字に」

 梶山弘志・経産相は13日の記者会見で、2030年に事業用太陽光発電の発電コストが原子力よりも安くなるという同省の諮問機関が出した試算について、「原子力は太陽光発電とそん色ない。太陽光発電はバックアップ電源を用意するコストも掛かる」と話し、原子力の位置づけを変えないことを強調した。試算では30年時の原子力の発電コストを11円台後半としたが、専門家は「廃炉費用を入れたら天文学的な数字になる」と語る。(オルタナS編集長=池田 真隆)
 今回、試算したのは経産省内の総合資源エネルギー調査会の中にある「発電コスト検証ワーキンググループ」(座長・山地憲治・地球環境産業技術研究機構副理事長・研究所長)。発電コストは既存の施設を用いて試算したわけではない。2030年に新規で建設したと仮定してコストを算出した。
 試算では、1kwh当りの原子力の発電コストは11円台後半だった。太陽光発電(8円台前半から11円台後半)とLNG火力(10円台後半から14円台前半)の方が原子力よりも安価という結果になった。
 太陽光発電がはじめて原子力を下回ったが、梶山経産相は13日の大臣会見で、「原子力は太陽光発電とそん色ない。太陽光発電はバックアップ電源を用意するコストも掛かる」とし、現在改訂中の「エネルギー基本計画」について、原発と再エネなどを組み合わせた電源構成で議論していくべきだと強調した。

■試算に含まれていない3つのコスト

 確かに、試算で出した原発の発電コスト(11円台後半)は、太陽光発電(8円台前半から11円台後半)とLNG火力(10円台後半から14円台前半)の発電コストとそん色ない。だが、問題はこの試算をもとに考えてよいのかという点だ。
 『原発のコスト』(岩波書店、2011年)などの著者である龍谷大学政策学部の大島堅一教授は今回の試算について、「明らかに入れていないコストがある」と指摘する。
 主に入っていないコストは3つだ。一つ目は、「賠償費用」だ。試算では、賠償費用は7.9兆円で計上しているが、大島教授は「賠償格差を埋めるための地方交付金が数千億円ある。その原資は我々の税金だ」と話す。見えない「国民負担」もコストに入れるべきと主張する。
 二つ目が、「再処理費用」だ。六ケ所再処理工場などの大型施設にかかる費用が入っていないと言う。最後が、最も大きいコストと強調する、「廃炉費用」だ。試算では、「事故廃炉費用」という名目で8兆円を計上しているが、燃料デブリ取り出し以降に生じる廃棄物処理費用は「推計不能」として含んでいない。
 大島教授は「大型の原子力発電所を1基廃炉にすると、すさまじい量の放射性廃棄物が出る。廃炉費用を計算すると天文学的な数字になる。原発が経済的かどうかなど議論している場合ではない。将来世代にこの甚大な費用を押し付けていることも自覚していない」と語る。
 日本原子力学会は20年7月、廃棄物検討分科会の中間報告を発表した。大島教授は、「分科会が発表したデータによれば、大型施設を1基廃炉にすると、最低でも重量ベースで1000倍以上の放射性廃棄物が出る」とし、この処理費用を含むと「10〜20円高くなるという次元ではない」と語句を強める。
 そもそも、今回の試算では30年に新設する施設のkwh当りの発電コストを出した。大島教授は、単位がkwhとしていることについても、「本質的ではない」と批判した。「原発は、発電コストだけでなく、廃炉にかかる費用を含めて考えるべきだ」と訴えた。
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