「大噴火が少なすぎる近年の日本」(島村英紀さん講演)【 全講演資料 】
 
(1)「大噴火が少なすぎる近年の日本」(講演資料#01/84)
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※編集者注:当講演会のまとめは「地震がよくわかる会」で行いました。レジュメ、写真、島村さんの著書等を参考に作成しました。文中に【島村】とあるのは島村さんの発言をまとめたもの、【補足】とあるのは当会の判断で補足的な情報を付加したものです。当会がまとめた島村さんの発言内容について当人のチェックは受けていません。よって、意訳が過ぎた所、誤字・脱字等の問題があるかもしれませんが、その責任は当会にありますので、何卒ご了承下さるようお願いします。

 
【 概要 】
 
【 レジュメ 】
 
【 目次 】
 
【 最初のスライド 】 ※最初の画面(スライド)から右矢印で順次画面をたどれます。
 

 
(2)講演会場写真(講演資料#02/84)
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【島村】日本はご存知のように火山活動が非常に活発であって、首都圏の方は火山というのは遠い存在だと思っているかもしれません。けれども、実は富士山から新宿までは95kmしかありません。富士山が噴火した場合に、富士山から東京に火山灰がくるまで約2時間程度です。噴火した直後に避難したとしても、皆さんがここからお家に帰るまでの間に、火山灰に合ってしまう。火山噴火はそれほど遠い存在ではないことに注意してほしい。
 しかも、自然災害というのは文明が発達するにしたがって、被害が大きくなる。人間社会にとって被害が大きくなる。具体的にいうと、コンタクトと火山灰の問題があります。コンタクトを付けた状態ですと、角膜を痛める可能性があります。火山灰というのは、顕微鏡で見るとよく分かりますが、ガラスの粉で出来ています。非常にとんがっています。ですから、通常の灰とは全く違うので、火山灰は悪さをします。
 コンピューターもそうです。コンピューターの中にはハードディスクというのがあります。ハードディスクというものは、物凄い小さな隙間を保って、円板が回転しています。その隙間に火山灰が入ると、コンピューターを止めてしまう。ということが十分考えられます。今はご存知のように、あらゆるところでコンピュータ―でコントロールされています。コンピューターが止まった場合は大変な混乱となります。
 

 
(3)プレートの一生(講演資料#03/84)
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【島村】こういうプレートが日本の近くにある。プレートというのは基本的にはニワトリの卵の殻に似ています。地球を卵に例えると、からの厚さとプレートの厚さは似ています。プレートの動きによって地震も火山も起きます。
 

 
(4)クラフラ(アイスランド北部)(講演資料#04/84)
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【島村】プレートというのは非常に硬いものでして、プレートが生まれるところはどこか。アイスランドでプレートが生まれます。これ(スライド)は1991年8月に私が撮った写真で、1984年にプレート生まれる大事件がありました。ここはプレートの境です。7年たっても水蒸気も出ています。プレートは海で生まれる場合が多く、陸上生まれるケースは世界に幾つもありません。ここを境にして、東側がユーラシアプレート、西側が北アメリカプレートです。ここから1万kmいった所の日本にも、この境はあります。
【補足】
・島村氏のウェブの165頁目に当写真に関するコメントがある。以下にその内容を抜粋する。写真のみ表示の場合はココをクリック。
「いまでも、あちこちに蒸気が噴き出していて、歩くと靴の底が焼けるように熱くなる。出てきた溶岩は水平線近くまでの地表(はるか彼方に見える黒と灰色の境まで)を埋め尽くした。中央に立つ人と比べると溶岩のスケールがいかに大きいかわかるだろう。」
 

 
(5)日本の火山:活火山(講演資料#05/84)
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【島村】この図は日本の火山の分布状態を示しています。火山が無いのは紀伊半島、四国、中国地方の一部であり、この辺(中国地方)、大昔は火山があったのですが、今は眠っています。東日本には火山が多くありましす。山口県から九州にかけても火山が多くみられませす。気象庁が認める活火山というのを、黒い三角(▲)で表しています。
【補足】
・気象庁HPの日本の活火山分布図
・気象庁HPの我が国の活火山の分布
・気象庁HPの活火山総覧第4版 活火山分布図(火山位置もしくは火山名をクリックすると、各火山の概要・写真・火口周辺図・地形図・海底断面図・噴火滑動史・防災に関する情報・社会条件等を表示)
 

 
(6)マグマが生まれる場所(講演資料#06/84)
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【島村】日本列島の西側に大陸プレートであるユーラシアプレートがあり、東側に海洋プレートである太平洋プレートもしくはフィリピン海プレートがあります。海洋プレートがユーラシアプレートに潜り込む形となっている。海洋プレートがユーラシアプレートの下に入っていったときに、90〜130キロの深さの所、およそ100キロ前後の所でプレートが溶ける。この上(棒の先端のうえあたり)は上部マントルですが、マントルとプレートが溶ける所があります。溶けるとどうなるかというと、マグマという溶けた液体が、回りより軽いので、マントルの中をかき分けてあがってくる。一旦マグマだまりを作り、最後は地上に出てくる。それを噴火という現象になります。
【補足】
・当講演レジュメの相当ヶ所を以下に抜粋する。
「日本には地震が多いだけではなく、火山も多い。日本の陸地の面積は世界の0.25%しかないのに、世界の陸上にある火山の7分の1も日本にあり、一方、地震もマグニチュード(M)6を超える世界の大地震の22%が起きている。ともに、面積あたりでは群を抜いている。
 プレートの動きは止まることはなく、太平洋プレートは年に約8cm、フィリピン海プレートは約4.5cmの速さで日本列島に向かって動き続けている。
 このプレートの動きによって、岩が我慢できる限界を超えると起きるのが地震、そしてプレートが約100kmのところまで潜り込んだところでマグマが作られ、それが上がってきて起こすのが火山噴火だ。地震はプレートの動きの直接、火山は間接的な反映になる。」
 

 
(7)火山前線(講演資料#07/84)
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【島村】日本列島の真下で、火山帯を作ります。火山前線の東側では温度が低いのでマグマは生まれません。マグマが生まれるところが火山となります。火山分布の東側の端がわりとはっきりしているので、火山フロントあるいは火山前線といいます。マグマというのは、大変な温度で、液体として存在する。マグマがどうしてできるかというと、浅いと温度が足りない、もっと深いとどうなるか、実は海溝から海の水をもちこみます。そのことによって岩が非常に溶けやすくなる。これは実験室でやってみればわかることです。水といっても、火山フロントの下あたりの深さになると、温度は1000℃、圧力は数百気圧あるいはもうちょっと高い気圧になります。実験室で、この条件により、岩が溶けることが確かめられています。日本列島の真下で、深さ100km前後のところで岩が溶けて、そこでマグマが生まれます。
 日本列島のちょうど真下の所からマグマが生まれるので、そういった意味では日本列島をちょうど串刺しにするように、火山帯というのがあるということになります。そこで具体的には、東日本火山帯があって、北海道の南側から東北地方を縦断して、ここに富士山があって、八丈島、大島がここにある。よって、東日本火山帯は日本列島に太平洋プレートがもぐりこむことによって、太平洋プレートの下90〜130キロの深さでマグマが生まれて、最終的に上がってところが火山となる。一方、フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に潜り込み、こんどは九州を縦断する形で、西日本火山帯があります。点線のところは、昔は活発だったが、今はやや落ち着いている。
【補足】
・当講演レジュメの相当ヶ所を以下に抜粋する。
「海洋プレートが日本列島の地下に潜っていったときに、上の図のように、深さ90〜130kmのところでプレートの上面が溶けてマグマが生まれる。
 生まれたマグマはまわりの岩よりも軽いから、上に上がってくる。途中にいくつかの「マグマ溜まり」を作り、最終的に火山の噴火を起こす。
 第一回の講演のときにお話ししたように、日本には4つのプレートがある。これらのプレートはおたがいに衝突している。太平洋プレートが北米プレートやフィリピン海プレートと衝突してそれらの下に潜り込む事件は千島列島から東日本、そして西之島新島の先まで続いている。
 それゆえマグマが作られている場所は帯状になり、海溝に並行になる。その結果、火山は日本列島を串刺しにした線上に並ぶ。東日本火山帯である(右の図)。海溝からは西に離れているが、これは衝突した海洋プレートが斜めに潜り込んでいるからである。
 同じように西日本ではフィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に潜り込むことによって西日本火山帯が作られている。日本にある活火山はすべてこの二つの火山帯のどちらかにある。
 日本には活火山と認定されている活火山だけでも110もある。
 活火山とは過去1万年以内に噴火したことが分かっている火山で、研究が進むにつれて増えてきている。
 なお、昔、学校でも教えていた「活火山・休火山・死火山」という分類は、とても分かりやすい分類だったが、いまはない。それは、死火山だと考えられていた御嶽山が1979年にいきなり噴火して以来、分類そのものがなくなったからだ。学問的には「死火山」が今後噴火しないかどうか、分からなくなってしまったのである。」
 

 
(8)火山前線・火山帯(講演資料#08/84)
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【島村】※前のスライド「火山前線」の説明を参照してください。
 

 
(9)木曽御岳(講演資料#09/84)
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【島村】※詳細は下記の【補足】部分を参照してください。
【補足】
・島村氏のウェブの127頁目に当写真に関するコメントがある。以下にその内容を抜粋する。写真のみ表示の場合はココをクリック。
「2014年9月27日に、木曽御獄は、突然噴火して50人以上の登山者がなくなるという戦後最大の火山災害になってしまった。
 左の写真は2014年10月10日に、長野県・蓼科から撮った御獄。山頂の左に噴煙が見える。根元は白、左上に延びている黒い雲までが噴煙である。9月の噴火時には噴煙は約7000mまで上がった。
 山頂付近に白っぽく見えるのは、今回の水蒸気爆発で噴出した火砕流であろう。右側の谷筋に見えるのも火砕流が流れた跡だと思われる。
 この山は死火山だと思われていたが、1979年に噴火して、活火山だったことが判明した。その後、死火山、休火山、活火山という区別をなくした契機になった噴火である。
 なお、蓼科から御岳までは、約63 km ある。」
 

 
(10)木曽御岳(講演資料#10/84)
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【島村】火山学者として言いたいことは、木曽御岳の噴火は戦後最大といっても、噴火としては小さいものだったということです。噴火の量というのは、実は対数目盛に表すのですが、とても小さいものからとても大きいものまであります。具体的にいうと、火山から吹き出したものは、火山灰であったり、火砕流だったり、溶岩だったり等々ありますが、、それらの総量を測る。東京ドームではかると、1/5〜1/3だった。噴火としてはそんなに大きいものではありません。被害が大きかった理由は、週末の土曜日だった、天気が非常に良かった、昼頃で、皆さんが山頂付近で弁当を広げていたころだった。そういった意味で、山頂付近に人が集まっているときに噴火が始まって、たくさんの人が犠牲になった。西日本にある3000m級の山だが、山の近くまで、道があり、たくさんの人が集まっていたのが不幸でした。ところが、1/5〜1/3とそんなに大きな量ではなかった。実は「大噴火」というのがありまして、それは東京ドーム250杯分、木曽御岳の噴火と二桁以上、大きいものです。
【補足】
・当講演レジュメの相当ヶ所を以下に抜粋する。
「2014年9月に起きた御嶽山の噴火は60人以上という戦後最多の犠牲者を生んでしまった。だが、噴火の規模からいえば日本で過去に起きた噴火に比べると、この噴火はマグマが出てきたわけではなく、ごく小さなものだった。
 御嶽山が噴出した火山灰や噴石の合計の容積は東京ドーム(容積は124万立方メートル)の1/3〜1/2ほどの量だった。
 ところで、19世紀までの日本では、各世紀に4〜6回の「大噴火」が起きていた。「大噴火」とは火山学で東京ドームの250杯分、3億立方メートル以上の火山灰や噴石や熔岩が出てきた噴火をいう。御嶽山の噴火よりもはるかに大きな噴火である。
 この「大噴火」は17世紀には4回、18世紀には6回、19世紀には4回あった。
 ところが20世紀になると「大噴火」は1913〜1914年の桜島の噴火と1929年の北海道・駒ケ岳の噴火の2回だけで、その後100年近くは「大噴火」は起きていない。」

※木曽御岳火山から噴出した総量の記述において、講演のスライドでは東京ドームの1/5〜1/3とありますが、レジュメでは1/3〜1/2と食い違いがあります。よって、編集部で以下のように調べてみました。その結果、講演のスライドの方(1/5〜1/3)がより正確な数値であるように思われます。
・東京大学地震研究所のHPの「2014年9月27日御嶽山の噴火」に「御嶽山2014年9月27日噴火の降灰分布および降灰量について」(火山噴火予知研究センター:前野深)がある。その文中に9月27日噴出量の概算値の見積もりの箇所がある。以下に抜粋する。
「9月27日噴火の噴出量の概算値を見積もったところ,60-110万トン(溶岩換算体積: 23-44万m3)であることがわかった」
 東京ドームの容積はレジュメに記述のある124万立方mと仮定する。各比率を計算すると、23/124=0.18、44/124=0.35 となり、講演のスライドの方の値(1/5〜1/3)にほぼ等しい値となった。
 

 
(11)御岳は1979年までは「死火山」しかし、いきなり噴火(講演資料#11/84)
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【島村】御岳は1979年までは「死火山」でしたが、 いきなり噴火してしまいました。
 

 
(12)活火山×休火山×死火山×(講演資料#12/84)
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【島村】※詳細は【補足】に示しました。
【補足】
・島村氏のウェブに当スライドの内容にほぼ沿った記事(「地球物理学の言語文化」)があった。以下にその内容の一部を抜粋する。
「羊蹄山の近くに住む、見知らぬ人から電話があった。羊蹄山は死火山だと思っていたが、どこかの事典を見たら休火山と書いてあった、危険が増えたのだろうか、という問い合わせである。
 読者の多くも、活火山、休火山、死火山という言い方をご存知だろう。教科書にもそう書いてあった。死火山は、もう噴火しない昔の火山、休火山は有史以来、噴火した記録が残っている火山で、将来噴火するかも知れない火山、と教わったはずだ。
 しかし、気象庁は、休火山や死火山という言い方を、じつは20年以上も前からやめてしまっているのだ。火山が本当に死んでいるのかどうか、学問的には断定できないことが分かったからだ。たとえば1979年に、死火山だと思われていた木曽御岳が噴火したこともこたえていたに違いない。
 気象庁や日本火山学会は、この変更について、十分広報したはず、と言っている。
 だが、一般の人たちは、まさか死火山や休火山が「死語」になっているとは思っていないだろう。つまり、この「変更」は十分に知られていないに違いない。
 死火山。休火山。これほど分かりやすい言葉を子供のころに刷り込まれてしまった以上、なかなか抜けるものではない。
(後略)
(『魚眼図』(北海道新聞・文化面)、2004年11月15日夕刊〔No.319〕)」
 

 
(13)木曽御岳は、火山学者をだました(講演資料#13/84)
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【島村】2007年3月にごく小規模な噴火をしました。2014年よりは小規模な噴火だったが、約4ヶ月前から火山性地震も山体膨張も観測され、噴火の約2ヶ月前から低周波地震や火山性微動も観測されました。火山性微動や火山性地震は噴火が近づいた場合に観測されることが多いのです。ところが、2014年9月の噴火の場合は、噴火の11分前に突然に火山性微動を観測したので、警告が間に合わなかった。いきなり噴火してしまった。2014年の噴火の2週間前に地震活動があったが、地震活動はなくなっていた。火山性微動はまだないので、2014年の噴火時には、噴火警戒レベルでいうと、レベル1という山頂まで行って良いというレベルだった。
 

 
(14)火山噴火の現象さまざま(講演資料#14/84)
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【島村】火山から出るもので一番怖いものとしては、溶岩流だったり、火砕流だったりがあります。火砕流は温度が300度で、速さは新幹線並みですので、逃げ切れません。溶岩流の場合はうまく走れば、逃げ切れる可能性はあります。火山灰は偏西風にのって遠くまでいきます。1993年に日本では冷害となりました。1991年フィリピンのピナツボ火山が大噴火をして、火山の噴煙が世界中を覆って、この冷害をもたらしました。
【補足】
「巻頭インタビュー 火山噴火予知連絡会会長 藤井敏嗣氏」(リスク対策.com 誌面情報 vol53 2016年1月25日号)の「なぜ御岳山は予知できなかった!?」に「災害を引き起こす火山噴火現象」(図)がある。
 

 
(15)火山にはじつはもっと大きな「大噴火」とさらに大きな「カルデラ噴火」(講演資料#15/84)
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【島村】さきほど申し上げましたが、御岳の噴火はそれほど大きくなかった。それより大きい「大噴火」があります。そして、それよりさらに大きな「カルデラ噴火」というのがあります。
 

 
(16)火山の「大噴火」と「カルデラ噴火」(講演資料#16/84)
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【島村】御嶽噴火は東京ドームの1/5〜1/3でした。「大噴火」は東京ドーム250杯以上あります。「カルデラ噴火」は10万杯以上あります。一番最近のは7300年前です。日本では数千年に一度というペースで起きているという事から類推して、そろそろ「カルデラ噴火」が起きても不思議ではありません。
 

 
(17)火山の「大噴火」(講演資料#17/84)
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【島村】これが火山の「大噴火」というものなのですが、さきほどのように、東京ドーム250杯以上ですので、10億立方m、あるいは3〜10億立方m、、両方とも250杯以上になります。17世紀には4回、18世紀には6回、19世紀には4回ありました。非常に不思議な事に、20世紀に入ると、桜島、北海道駒ヶ岳の二つだけで終わってしまいます。この最後の北海道駒ヶ岳の噴火(1929)から100年近く、「大噴火」が無いことが非常に不思議です。そういった意味では、いつかは、いつかというのは、近々なんですが、あるのではないのかというのが、地球物理学者の考えです。21世紀、このまま「大噴火」が無い状態が続くことはないというのが、地球物理学者の常識です。
【補足】
大規模火山災害について_藤井敏嗣_ナショナル・レジリエンス懇談会20150203_資料(PDF形式)の3ページ目に「17世紀以降の火山噴火」がある。
 

 
(18)活火山は110もある(講演資料#18/84)
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【島村】活火山は東日本に多く、九州にも多い。日本中火山だらけといえます。
【補足】
・気象庁HPに「我が国の活火山の分布」がある。
 

 
(19)常時監視されている火山は50(講演資料#19/84)
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【島村】気象庁は特に危ない火山を常時監視しています。常時監視は、東京気象台、仙台管区気象台、札幌管区気象台等のデータを集めて、そこで、担当者がいます。常時監視している火山は50あります。110から50を選んだ。ただ選んだ基準というのは非常にあいまいです。特に御岳山は、ずっと死火山で噴火しないものと思われていたのに、噴火してしまった。それから慌てて、常時監視にしたわけです。
【補足】
・気象庁HPの「火山の監視」の中に「火山監視・警報センターにおいて火山活動を24時間体制で監視している火山(常時観測火山)」というがある。
・上記の「火山の監視」中に「常時観測火山」についての説明がある。以下に抜粋する。
『「111の活火山のうち、「火山防災のために監視・観測体制の充実等が必要な火山」として火山噴火予知連絡会によって選定された50火山については、噴火の前兆を捉えて噴火警報等を適確に発表するために、地震計、傾斜計、空振計、GNSS観測装置、監視カメラ等の火山観測施設を整備し、関係機関(大学等研究機関や自治体・防災機関等)からのデータ提供も受け、火山活動を24時間体制で常時観測・監視しています(常時観測火山)』
 

 
(20)「噴火警戒レベル」が設定されている火山(講演資料#20/84)
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【島村】噴火警戒レベルの話をします。1から5まであります。1が多いですね。御嶽山は3です。噴火したら4か5になる。「噴火警戒レベル」はこれから噴火するから危ないよということで上げるではなくて、噴火したから、あわてて上げるというのが多い。問題はレベル1なんですが、御岳が噴火するまではレベル1だった。御岳が噴火するまでは「山頂まで行っていい」ことになっていた。噴火後に変えたわけです。レベル1は「活火山であることに留意」とありますが、これは、言い方を変えただけで、レベル1であることは変わりません。
【補足】
・気象庁HPの噴火警報・予報(地図表示)で「現在の警報事項(全国)」が表示されます。
・気象庁HPに「御嶽山の噴火災害を踏まえた火山情報の見直しについて〜「火山の状況に関する解説情報」等の変更〜 」という報道発表資料がある。その中にレベル1の表現の変更の記述があったので以下に抜粋する。
『報道発表日 平成27年5月12日
 昨年9月27日に発生した御嶽山の噴火災害を踏まえ、火山噴火予知連絡会に設置した「火山情報の提供に関する検討会」において、平成27年3月26日に最終報告が取りまとめられました。
 気象庁では、この最終報告を受けて、火山情報について以下の見直しを行うこととしましたのでお知らせします。
(中略)
2.噴火予報におけるキーワード「平常」の表現の見直し
噴火警戒レベル1及び噴火予報におけるキーワード「平常」の表現を、活火山であることを適切に理解できるよう、「活火山であることに留意」に改めます。
平成27年5月18日14時より変更します。
(後略)』
 

 
(21)噴火警戒レベル(講演資料#21/84)
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【島村】噴火警戒レベルは一般的に学問的な裏付けはなくて、「経験と勘」だけなんです。経験というのは、例えば、群馬県と長野県の境にある浅間山、鹿児島県の桜島は、観測を始めてから、数10年以内に90回以上噴火、そういう所は経験がある。一方、富士山や箱根は、噴火したのは随分と昔でありまして、そういう意味で経験が非常に少ない。
【補足】
・気象庁HPの「噴火警戒レベルの説明」の中に「噴火警戒レベル」という各噴火レベルに関する対象範囲・レベルとキーワード・説明等がある。
 

 
(22)火山の「大噴火」(講演資料#22/84)
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【島村】富士山は非常に大きな噴火を18世紀にしています。宝永の噴火(1707)です。
【補足】
大規模火山災害について_藤井敏嗣_ナショナル・レジリエンス懇談会20150203_資料(PDF形式)の3ページ目に「17世紀以降の火山噴火」がある。
 

 
(23)富士山は4階建て(講演資料#23/84)
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【島村】富士山は一つの秀麗な形にみえますが、実は断面を見ますと4階建てになっています。数10万年前の先小御岳、そして、ここに小御岳神社がありますが、10万年以上前の小御岳、それから、40-10万年の愛鷹山、10万〜1万年前の古富士山等の4回大きな噴火を繰り返して出来ている。
【補足】
・鎌田浩毅氏のコラム「富士山は4階建ての活火山」(帝国書院 高等学校 地理・地図資料 2004年10月号)の中に「富士山の4階建ての地下構造(吉本充宏氏の図を改変)」の図がある。
 

 
(24)富士山は噴火のデパート(講演資料#24/84)
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【島村】富士山の主な噴火は分かっているのはこれだけで、これは大きな噴火だけですが、小さなのはもっとたくさんあります。富士山というのはしばしば噴火する。ただ、宝永噴火から300年近く噴火はありませんから、そういった意味で、ずっと噴火しないことはありえませんので、そういった意味では、噴火しても不思議ではない。遠い将来、未来に、噴火がくるのはほぼ間違いない。
【補足】
・気象庁HPに「富士山 有史以降の火山活動」がある。
 

 
(25)東日本火山帯の富士山(講演資料#25/84)
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【島村】富士山の宝永噴火は1707年です。宝永火口というのがココ(山腹のくぼみ)にある。山頂ではなくて、山腹から噴火した。
【補足】
・島村氏のウェブの137頁目に当写真に関するコメントがある。以下にその内容を抜粋する。写真のみ表示の場合はココをクリック。
「宝永噴火の特徴は大量の火山灰を噴き出したことだ。噴火の噴出物量は8億立方メートルもあった。100km離れた江戸でも多くの火山灰が積もった。 江戸で降った最初の火山灰は白い灰であったが、夕方には黒い灰に変わったという。火口が移り、火山灰の成分が変化したのだった。江戸に降り積もった火山灰は当時の文書によれば5〜10cmといわれている。
 全体で、2週間続いた噴火だった。しかし、溶岩が流れ下ることはなかった。」
 

 
(26)宝永噴火が再来したら・・(講演資料#26/84)
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【島村】宝永火山の火山灰というのは、偏西風という西風にのって、東側へ向かった。この辺で70cm、60cmセンチ、1m、この辺でも10cm近くとなっている。火山灰が仮に首都圏まで来た場合には、例えば道路の白線が消えてしまう等の交通の大混乱が発生する恐れがある。健康被害も大変なことになる。肺の弱い方、病気気味の方は大変な影響がある。富士山は首都圏に非常に近いにも関わらず、首都圏の人は富士山の噴火を忘れていることが多い。
【補足】
・NHKのHPに「第7回 富士山宝永噴火のような爆発的噴火が現代に起こったら?」(藤井敏嗣氏)がある。その中の「現代に宝永噴火が起ったらどうなるか」に「[図2]現代地図と宝永火山灰厚さの分布」という図がある。
 

 
(27)宝永噴火の49日目宝永地震(講演資料#27/84)
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【島村】もうひとつは、宝永噴火の49日前、宝永地震という南海トラフの地震がありました。これは昔のことはわかっていないのですが、この宝永地震の影響を受けて、宝永噴火が起きたようにも見える。世界的にいっても、地震の後に火山が噴火した例というのは多いんです。
【補足】
「富士山噴火 過去の前兆や大地震との連動についての基礎知識」(小山真人氏)の「2.大地震は富士山の噴火を誘発させるか」の中に「富士山の1704年異常と1707年噴火の事件推移のまとめ」という図がある。
・当講演レジュメの相当ヶ所を以下に抜粋する。
「「地震が誘発した」有名な噴火がある。1707 年の宝永地震の 49 日後に富士山が大噴火した宝永噴火だ。この噴火は富士山の三大噴火のひとつになった大きな噴火だった。関東地方にも多量の火山灰を降らせた。この火山灰は、噴火後わずか 2 時間で江戸に達した。富士山から新宿まで 100km しか離れていないことを忘れてはいけない。
 三大噴火のあとの二つは平安時代に発生した「延暦の大噴火」と「貞観の大噴火」である。そのほか、平安時代 400 年間に、富士山は 10 回も噴火している。平安時代のはじめの 300 年の間に 10回(一説によれば 12回)も噴火したのである。
 宝永噴火以来、富士山が 300 年間も噴火しない状態が続いているのは異例である。また、世界的に見ても、長い間噴火しなくて、次に噴火したときには大きな噴火になる例が多い。
 いま恐れられている「南海トラフ地震」は宝永地震が再来するような大きな規模ではないかと言われている。フィリピン海プレートが年々動いているので、地震エネルギーも年々蓄積している。じつはひとつ先代の地震、東南海地震(1944 年)と南海地震(1946 年)は歴代の先祖と比べても小さめだった。つまり、残っている地震エネルギーが次回に加算される可能性がある。
 もしこの地震が起きれば、以前と同じように火山の噴火を誘発する可能性がある。ちなみに、南海トラフ地震の先祖のひとつである慶長地震(1605 年)のすぐあとには八丈島の火山が噴火した。」
 

 
(28)富士山から出た火山弾(御殿場駅前)(講演資料#28/84)
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【島村】※詳細は【補足】に示しました。
【補足】
・島村氏のウェブの137頁目に当写真に関するコメントがある。以下にその内容を抜粋する。写真のみ表示の場合はココをクリック。
「御殿場線(旧東海道本線)の御殿場駅前には、富士山から飛び出した火山弾が展示されている(右の写真=2015年5月に撮影)。火山弾にはもっと大きなものもあり、直撃を受けたら、もちろん即死だ。火山弾とは、溶けた溶岩が噴火で飛び出して、空中で固まったものだ。そのため、このように流線型になることが多い。なお、御殿場は標高約500mのところにある。」
 

 
(29)箱根・外輪山と中央火口丘(講演資料#29/84)
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【島村】箱根の話をします。箱根は空から見ると、ここが外輪山、ここが中央火口丘。外輪山の中に年間で2000万人の観光客が訪れている。箱根というのは非常に恐い火山です。例えば、中央火口丘から出た火砕流が長尾峠(西側の外輪山の真ん中あたり)を越えていったことが分っています。それと同時に芦ノ湖というのは、元々は川が流れていただけなのですが、せき止めてしまって、現在の芦ノ湖となった。
【補足】
・地理院地図の箱根山付近
 

 
(30)箱根・外輪山と中央火口丘(講演資料#30/84)
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【島村】これは長尾峠から見た芦ノ湖です。中央火口丘は、かつて、その倍以上の高さがあった。これが今の中央火口丘です。高い所があったが、吹き飛んでしまった。今、2000万人の人が年間訪れる。噴火時の避難の際、あの狭い道で大丈夫か。雪の場合もある。等々大変な困難が予測されます。
 

 
(31)箱根は過去に大噴火(講演資料#31/84)
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【島村】箱根は1200年前の噴火が最後で、そのあと噴火していません。しかし、もっと前を調べると、3500年前には大噴火がありました。中央火口丘の上半分を吹き飛ばし、仙石原と芦ノ湖を作った。また、長尾峠を越えて火砕流が外輪山の西側に流れ出した。しかも6万年前には火砕流ができて、東50kmにある横浜まで達した事が分っています。今、茅ケ崎に人が非常にたくさん住んでいます。人がいなければ、なんという事はなかったのですが、今は人がいますので、そういった意味では、今度噴火すると大変な騒ぎになります。
 

 
(32)富士山と箱根は実は兄弟(講演資料#32/84)
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【島村】富士山と箱根は実は兄弟でありまして・・・。
 

 
(33)日本列島の成り立ち(講演資料#33/84)
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【島村】日本列島は最初は大陸の東の端にありました。それが緑色の列島の状態になって、黄色になって、今は赤色の列島になっています。大陸から分かれてきたというのが分ってきた。この状態になるまでに、サンゴ礁、火山島等が流れ着いたのが、日本列島になります。
 

 
(34)伊豆半島がくっついたのはわずか数十万年前(講演資料#34/84)
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【島村】伊豆半島というのは実は、非常に新しくて、わずか数10万年前にくっついたのが分っています。伊豆半島は最後にくっついた火山島ですから、東海道線は元々、国府津からここ(指示棒の先端)を通って沼津を通って大阪に行くという線路でした。ここは火山島である伊豆半島と日本列島の平らな海岸線がぶつかった所です。今は、御殿場線として残っています。そういった意味でここは非常に通りやすい所です。
 丹那トンネルは後から出来ました。これは吉村昭さんのデビュー作の『闇を裂く道』の図です。丹那トンネルを抜けることによって、東京大阪間が短くなった。丹沢がありますが、これは火山島がぶつかった時に出来たシワなんです。
【補足】
Amazonの吉村昭『闇を裂く道』(文藝春秋; 新装版 (2016/2/10))の「内容」の一部抜粋を以下に示す。
「大正七年着工、予想外の障害に阻まれて完成まで十六年を要し、世紀の難工事といわれた丹那トンネル。人間と土の熱く長い闘いを描く。熱海―三島間を短時間で結ぶ画期的な新路線・丹那トンネルは大正7年に着工されたが、完成までに16年もの歳月を要した。けわしい断層地帯を横切るために、土塊の崩落、凄まじい湧水に阻まれ、多くの人命を失うという当初の予想をはるかに上回る難工事になった。」
 

 
(35)伊豆半島がくっついたのはわずか数10万年前(講演資料#35/84)
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【島村】伊豆半島がユーラシアプレートとぶつかったことで、富士山の下にマグマが形成され、箱根と富士山の噴火をもたらした。こういったことから、箱根と富士山は兄弟と言えるのではないかと思います。これが今の航空写真ですが、点線部が伊豆半島と日本列島の境です。元の東海道線の跡でもあります。これが昔の日本列島の海岸線となりますので、比較的、平らで広い所です。国道、東名高速道路、御殿場線と道を通しやすい場所となっています。
【補足】
・伊豆半島まるごとミュージアムのパンフレットに「伊豆半島ができるまで」がある。当会(地震がよくわかる会)のHPにその図の部分を抜粋した記事がある。以下にパンフレットの一部内容を抜粋する。
「伊豆半島の成り立ち 〜地球上の特異点〜
 伊豆半島の歴史は、約2000万年前にさかのぼります。
 当時の伊豆は、本州からはるか南のかなた数百km先の太平洋の海底に沈む火山群でした。その後、フィリピン海プレートの北上の動きに合わせて、日本の本州に接近、衝突。現在の半島の形になりました。約60万年前のできごとです。
 衝突後、20万年前までは、半島上のあちらこちらで噴火が続きます。天城山や達磨山といった伊豆の大型火山が誕生し、現在の伊豆半島の骨格を形作りました。
 これらの大型火山の活動が終わると、日本には数少ない単成火山群の活動がはじまります。大室山に代表される「伊豆東部火山群」の誕生です。また、フィリピン海プレートの動きは、現在も伊豆半島を本州に押し込み続けていて、緩やか地殻変動が、伊豆の大地の多様性を今なお育み続けています。
 こうした二重三重の地質学的特異性が伊豆半島を形成しており、伊豆半島は世界のどこを探しても例をみない、地球上の特異点ともいえる場所になっているのです。」
 

 
(36)富士山の監視:地震観測(講演資料#36/84)
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【島村】富士山は噴火したら大事件です。首都圏に大変な影響を及ぼします。そして、富士山の周辺には現在は施設が沢山あります。そういった意味で、富士山の地震の観測、監視が重要になっている。
 このスライドの上下のヒストグラムは何かというと、上は高周波地震(※)、?の地震で、1995年1月から2003年1月ぐらいにかけてのものです。下半分は何かというと、富士山の下にしかない、非常に特別な地震でありまして、低周波地震といいます。震源の深さは15kmから20kmです。富士山の高さは約4km、その4倍くらいの深さです。このように地下深くに起きていて、周波数が非常に低い地震を低周波地震といいます。低周波地震と地震とは関連がある場合があります。下の図を見てわかるとおり、実は2001年ぐらいに非常に増えたんです。火山学者、気象庁、その他の関係者たちは非常に驚いて、騒いだのです。しかし、結局2018年の今に至るまで噴火しませんでした。いまだに、これはなんだったのか分かりません。
 そういった意味で、これからも、この種の観測をし続けますが、富士山の一番まずい所は何かというと、前に噴火したのがかなり前な事です。噴火の前に何が起こっていたかを全然わかっていない。特に地震計による観測が始まったのは1926年ぐらいにです。よって、1926年より前は、地震計による観測すらありません。ですからこういった地震がだんだん増えて、噴火に至るとかが、全く分かりません。
【補足】
・(※)気象庁HPに「火山活動解説資料(平成14年8月)」という資料がある。その中に「防災メモ 高周波地震と低周波地震について」がある。その中から「高周波地震」の説明部分を以下に抜粋する。
「火山の周辺で起きる地震には、高周波(周期の短い)地震と低周波(周期の長い)地震とがあります。
 高周波地震は、P波、S波の相が比較的明瞭で、震源決定は低周波地震に比べ容易です。火山以外で一般的に起こる地震と同様、応力集中による地殻の破壊によって発生しますが、火山活動に直接関係する発生原因として、マグマの貫入に伴う火道周辺での岩石破壊などの例があります。」
・気象庁HPの「富士山の火山活動解説資料(平成15年11月)」(pdf形式)の2ページ目に「長期・月別 地震活動推移 (1995年6月以降の高周波地震・低周波地震の月別回数) 」がある。
 

 
(37)富士山の監視2:山体膨張(講演資料#37/84)
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【島村】富士山がここにあります。富士山の監視のために、富士山を中心とした半径20km以内の領域のGPS変位から求めた面積歪を計算をします。横軸は時間です。2005〜2006年を境にして富士山の面積歪が増えているように見えます。よって、富士山が山体膨張しているということが分っている。ただし、これがどこまでいったら危ないかという事が分りません。
【補足】
・神奈川県温泉地学研究所のHPに「富士山及び箱根火山の膨張歪と低周波地震活動に関する研究」がある。当トピックスの「2.富士山と箱根火山地域における膨張歪」に「図1 富士山を中心とした半径20km以内の領域のGPS変位から求めた平均的な面積歪。」がある。
 

 
(38)富士火山帯の富士山(講演資料#38/84)
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【島村】富士山に関しては他にも不思議なことがあります。滝沢林道での地割れが富士山の噴火の前兆とかは全くわかりません。また富士5湖での水位の変動が話題になったりしますが、それと噴火が関係あるかどうかも全く分かっていません。
【補足】
・滝沢林道での地割れに関するTVニュース(“富士山に異変!"林道に大規模な地割れや段差[2013/04/09 16:48])がある。テキスト部を以下に抜粋する。
「富士山の林道で、300メートルにわたって大きな地割れが見つかりました。
 山梨県によりますと、地割れが見つかったのは富士山山頂から北東、約5キロにある滝沢林道の路上です。標高約1800メートル地点で、約300メートルにわたって舗装された道路がひび割れたり波打っていて、70センチほどの段差も確認されたということです。雪や雨で、アスファルトの下の砂利が流れ出たことが原因として考えられるということです。現場周辺は、環境保全のため年間を通じて通行が規制されていますが、山梨県は可能な限り早く復旧したいとしています。」
 

 
(39)噴火予知(講演資料#39/84)
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【島村】噴火予知の話をします。これは地震予知よりは簡単だろうと皆さん考えでしょう。確かに地震と違って、いきなり噴火ということはありません。ただし、噴火予知に失敗した例はたくさんあります。どういう風に失敗したかというと、ここにある表は成功した例です。有珠山、三宅島、伊豆大島等では、噴火のかなり前、またはちょっと前に、地震の回数が非常に多いとかの前兆があって噴火が起きた。このように地震が起きてから噴火するパターンが非常に多い。
【補足】
・「リスク対策.com」2016年1月25日号(Vol.53)に「巻頭インタビュー 火山噴火予知連絡会会長 藤井敏嗣氏」という記事がある。その中の「警戒レベル1でも噴火する」というタイトルの中に「噴火前兆の観測例(資料 藤井敏嗣氏)」という図がある。
 

 
(40)噴火予知(講演資料#40/84)
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【島村】有珠山の例をお話しします。2000年の噴火の際には、非常にゆっくりですが、有珠山近くのアパートが歪んでいった。地殻変動が起っていた。噴火の起きる前に有感地震が多発し、非常に分かりやすい、予知しやすい火山だった。
【補足】
島村氏のウェブの182頁目に当写真に関するコメントがある。以下にその内容を抜粋する。写真のみ表示の場合はココをクリック。
「1977年8月7日9時12分に有珠火山の山頂付近で噴火が始まった。噴火は約1年で消息したが、地震と地殻変動は1982年3月まで5年近くも続いた。
 有珠火山の北側の山麓にある3階建ての県営アパートが、火山活動にともなう地殻変動で、激しく変形したほか、写真に見られるように、人の背ほどもある崖が作られてしまった。
 地殻変動がゆっくりしたものだったために、このアパートでは、幸い、死傷者は出なかったが、アパートそのものは人が住めなくなり、その後取り壊されてしまった。」
 

 
(41)噴火予知(講演資料#41/84)
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【島村】2000年の有珠火山噴火は住民全員を避難させて死傷者はありませんでした。今まで7回の噴火して、有感地震があれば必ず噴火、しかも、丸一日か二日以内に噴火しました。温泉街があるのですが、住民全員を避難させて死傷者はいませんでした。もっとも予知しやすい火山でした。
 

 
(42)有珠火山は地震が「確かな前兆」。過去7回とも。(講演資料#42/84)
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【島村】具体的には、3月31日は噴火したのですが、29日から地震が急激に増えました。あとで減ったのですが、普段よりはかなり地震回数が多いときに噴火した。ここからここ(噴火)まで、48時間、丸二日、噴火に先行して、活発な群発地震が続いた。
【補足】
・京都大学防災研究所のHPに「2000年有珠山噴火」という記事がある。その中の「2.2000年噴火開始前後の経緯と避難」に「2000年噴火開始直後の顕著な地震」という図がある。当図のみを表示する場合はココをクリック。
 

 
(43)噴火予知(講演資料#43/84)
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【島村】有珠火山は予知しやすい火山で、ただし、他の火山はもっと予知しずらい。「経過」(※)としてはどうだったか、最初の噴火よりもっと大きな噴火がくるに違いないと(いう経過が)予想されたが、実は、最初の噴火が最大の噴火だった。「終了」に至ってはもっとわからない。実は噴火が終わってから、半年ないし一年経ったから、終わっていましたとなる。いつ終わるかの時期をいえない。そういった意味では、「終了」は予知できなかった。
【補足】
※「経過」には、ある段階・過程を通って次の段階・過程に移るという意味がある。また、その変化するありさまを意味する。例えば「手術後の経過は良好」 等である。(WEB版三省堂大辞林を参考にした。)
 

 
(44)噴火予知(講演資料#44/84)
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【島村】困ることに噴火予知は火山ごとに性質が違う。一つの火山で成功した予知の方法は他の火山では使えない。「前兆」があっても噴火しないことも非常に多い。
 

 
(45)噴火予知(講演資料#45/84)
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【島村】これは宮沢賢治で有名な岩手山です。あらゆる「前兆」があっても噴火しなかったのが、岩手山の事例であります。
【補足】
・島村氏のウェブの186頁目に当写真に関するコメントがある。以下にその内容の一部を抜粋する。写真のみ表示の場合はココをクリック。
「岩手山はいままで知られているだけで7回もの大規模な山体崩壊を起こしている恐ろしい火山だ。山頂の西側に大きくえぐれているのは、かっての巨大な山体崩壊の跡である。」
 

 
(46)噴火予知(岩手山)(講演資料#46/84)
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【島村】1997年12月末から西側山腹の浅いところで群発地震が起りました。1998年2月に低周波地震が起きました。さらに地殻変動観測データにも変化(山体膨張)がありました。それで、1998年4月の末に火山性地震が頻発しました。それで噴火してくれると、よかったのですが。噴火すれば予知に成功したことになります。各大学の人が観測機器をもって、岩手山の周辺に集まったのですが、結局は噴火しなかった。
 

 
(47)噴火予知(岩手山)(講演資料#47/84)
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【島村】1998年9月3日に岩手山の南西約10kmでM6.2の直下型地震がありました。その後、地震活動が高まりました。しかし、1999年になって地震活動治まりました。しかし、1999年6月になって噴気は増えました。微動と低周波地震は続いているので、まだ噴火するかもしれないという事になりました。結局2002年から2003年をピークにして、6年越しだったのですが、地震活動はしだいに少なくなって、結局は噴火しなかった。これは地下で何が起きていたか分かりません。前兆らしきものがあったとしても、噴火はしないという例となります。このような事は岩手山だけにかぎりません、他の火山でも有り得ます。
 

 
(48)噴火予知(講演資料#48/84)
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【島村】岩手山だけはなくて、磐梯山もそうですね。磐梯山は1888年に大変な「大噴火」をしました。磐梯山の後ろ半分、大規模な「山体崩壊」を起して、大変な数の人が亡くなりました。
【補足】
島村氏のウェブの149頁目に当写真に関するコメントがある。以下にその内容を一部抜粋する。写真のみ表示の場合はココをクリック。
「右側(北側)に流れた大きな山体崩壊の跡が見える。これは1888年の大噴火のときの山体崩壊である。」
 

 
(49)噴火予知(磐梯山)(講演資料#49/84)
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【島村】2000年4月ごろから今までにない回数の火山性地震を観測しました。地震の数がどんどん増えていきました。8月に入って地震は急増し、15日には日に400回を超えました。40年前、ここに地震計が置かれて以来最も多い地震でした。当時は噴火警戒レベルというのがなくて、地元は8月17日登山禁止を宣言しました。けれども噴火はしませんでした。観光シーズンに入り、しびれを切らした地元が直接学者にメールでアンケートを行いました。ただ、アンケートの結果を公表しませんでした。そして、結局、観光シーズン、登山シーズンを向かえて、磐梯山は大丈夫だということで、入山規制を解除しました。
 

 
(50)噴火予知(講演資料#50/84)
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【島村】この写真は東桜島小学校です。この林の影にあるのですが、「科学を信頼するな」という石碑が建っています。(※)
【補足】
島村氏のウェブの192頁目に当写真に関するコメントがある。以下にその内容の一部を抜粋する。写真のみ表示の場合はココをクリック。
「1913年に有感地震が頻発し、地面が鳴動し、海岸には熱湯が噴き出した。人々は桜島が噴火するのでは、と心配した。
 しかし、村長からの問い合わせを繰り返し受けた地元の気象台長(いまの鹿児島地方気象台。当時は鹿児島測候所だった)は、問い合わせのたびに、噴火するという十分なデータを気象台は持っていない、噴火はしない、と答えたのであった。
 だが気象庁の「予測」に反して、桜島は大噴火を起こしてしまった(註1)。後ろは火山、前は海。逃げどころのなかった住民の多くが犠牲になった。8つの集落が全滅し、百数十人の死傷者を出す惨事になったのである。
 その石碑には「科学を信じてはいけない、危険を察したら自分の判断で逃げるべきだ」と記されている。気象庁にとって幸いなことに、この失敗はイタリアのように刑事事件にはならなかった。
 このように、科学的な事実を無視してまで人心を安定させたがるのはイタリアも日本も同じで、政府の根深い体質なのである。危ないか危なくないか、明確な根拠でもない限りは「危なくない」という体質だ。無用な混乱をできる限り避けたい、という日本の気象庁の伝統が裏目に出たのだった。」
 

 
(51)噴火予知(桜島)(講演資料#51/84)
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【島村】ごく最近2015年8月15日になっても、桜島では今までにない地震活動及び山体膨張があった。15日朝7時すぎに現象が始まった。10時半に気象庁で緊急記者会が開かれた。いままでにない地震活動で、いままでにない山体膨張で、「噴火警戒レベル4の特別警報」(桜島では初めて)として、警報レベルを引き上げて、住民も強制避難を行った。しかし、結局は何も起こらなかった。京大桜島観測所の井口氏は「35年の経験では初めてのこと」ということを言ったのですが、結局は、噴火しないまま終わってしまいました。
【補足】
・気象庁HPに2015年8月15日の報道発表資料(pdf形式)がある。以下にその一部を抜粋する。
「報道発表資料 平成27年8月15日 気象庁

桜島の火山活動について
−桜島に噴火警戒レベル4(避難準備)の特別警報を発表−

 本日(15日)10時15分に桜島に噴火警報を発表し、噴火警戒レベルを3(入山規制)から4(避難準備)に引き上げました。
 桜島では、本日07時頃から島内を震源とする地震が多発しています。また、桜島島内に設置している傾斜計および伸縮計で、山体膨張を示す急激な地殻変動が観測されており、その変化は一段と大きくなっています。
 桜島では、規模の大きな噴火が発生する可能性が非常に高くなっています。昭和火口および南岳山頂火口から3km以内の鹿児島市有村町および古里町では、重大な影響を及ぼす噴火が切迫していると考えられますので、厳重な警戒をしてください。
 昭和火口および南岳山頂火口から3km以内の有村町および古里町では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石や火砕流に厳重な警戒(避難等の対応)をしてください。
 風下側では降灰及び風の影響を受ける小さな噴石(火山れき)に注意してください。降雨時には土石流に注意してください。
 桜島で噴火警戒レベル4(避難準備)を発表したのは、平成19年12月の噴火警戒レベルの運用開始後初めてです。」
 

 
(52)噴火予知(桜島)(講演資料#52/84)
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【島村】気象庁は2015年8月15日に桜島に「噴火警戒レベル4の特別警報」をだし、住民も強制避難した。しかし、大噴火は起きなかった。丁度お盆の時期でしたので、家に帰りたい、お墓参りをしたいということで、半月後の9月1日「噴火警戒レベル」を下げて、住民も家に帰れました。
 

 
(53)噴火予知(桜島)(講演資料#53/84)
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【島村】噴火しないにしても、爆発的な噴火はずっと続いています。今でも年に1300回、1000回以上の噴火をしております。鹿児島で朝の天気予報をご覧になると、必ず風向きの事がニュースになる。つまり、鹿児島の方に流れるか風向きかどうかが関心事なのです。不思議な事に2015年8月の「騒ぎ」後は噴火活動は沈静化していった。今、やや元にもどってきました。2015年8月に起きた、地震が増えた事等の理由が未だに分かっていません。
 

 
(54)噴火予知と地震予知(講演資料#54/84)
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【島村】「天気予報」では「大気の運動方程式」が、すでに分かっている。地震や火山については、残念ながら「大気の運動方程式」といったものは分かっていません。「天気予報」の方では、その方程式に、アメダスやゾンデの3次元的なデータ、上空の風向きや温度等のデータを入れれば、明日の天気が計算できます。その計算を繰り返せば、明後日以降も計算できます。
 

 
(55)噴火予知と地震予知(講演資料#55/84)
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【島村】しかし、噴火予知も地震予知も「大気の運動方程式」にあたる方程式はまだ出来ていません。これがひとつ。1300地点もあるアメダスにあたるものは、地下深くにある基盤岩のなかのデータだが、ほとんどありません。首都圏でも、非常に微々たるものです。しかも方程式がないということで、天気予報よりは「ずっと遠い」というのが噴火予知と地震予知の現状です。
 

 
(56)火山の「大噴火」と「カルデラ噴火」(講演資料#56/84)
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【島村】「大噴火」は東京ドーム250杯以上となります。「カルデラ噴火」はそれよりさらに大きくて10万杯以上です。過去12万年間に10回起きています。数千年に一度の間隔で発生していることになります。現在の科学では、「カルデラ噴火」のような大きな噴火の発生が近づいているかを知ることはできません。
 

 
(57)縄文文明を途絶させた「カルデラ噴火」(講演資料#57/84)
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【島村】一番最近の「カルデラ噴火」としては九州の南方の鬼界カルデラというのがあります。7300年前に噴火しています。7300年前は縄文時代です。西日本では縄文遺跡が全く出ません。縄文時代に西日本に縄文人が住んでいなかったというのは有り得ないので、「カルデラ噴火」によって、西日本の縄文人は死に絶えてしまったと言われています。そういった意味で、比較的この噴火の影響が少なかった東北日本と北海道だけに縄文遺跡が残った。
【補足】
・内閣官房のHPに「大規模火山災害について」(藤井敏嗣氏)という資料(pdf形式)がある。その中の「日本を火山灰で埋めた巨大噴火」(10頁目)に「鬼界カルデラ噴火(7300年前)」という図がある。
 

 
(58)「カルデラ噴火」は過去たびたび(講演資料#58/84)
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【島村】日本に「カルデラ噴火」が随分たくさんあることを示す図がこれです。この赤い線が火山灰が降った範囲、赤い丸が火山の場所です。伯耆大山、これは今は活火山ではありませんが、そういった意味では伯耆大山も「カルデラ噴火」したこともあります。白頭山でも「カルデラ噴火」があり、北海道の支笏でも「カルデラ噴火」をして、その火山灰が、今度の胆振東部の地震で崩壊したということがありました。九州でくり返し起きた「カルデラ噴火」により、九州全体にシラス台地をもたらしています。
【補足】
・NHKのHPに「第5回  カルデラ噴火! 生き延びるすべはあるか?」(藤井 敏嗣氏)というコラムがある。その中の「広域火山灰の分布」に「【図1】最近12万年間における広域火山灰の分布範囲(出典:理科年表より)」という図がある。図のみ表示の場合はココをクリック。
 

 
(59)日本最大の屈斜路カルデラ(講演資料#59/84)
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【島村】これは屈斜路カルデラですが、日本で有数のカルデラで、半径数10kmあります。非常に大きな噴火により、マグマが大量に噴出し、マグマのあった部分が空洞になって、沈下して、それでカルデラになります。
【補足】
・島村氏のウェブの112頁目に当写真に関するコメントがある。以下にその内容を抜粋する。写真のみ表示の場合はココをクリック。
「北海道東部にある日本最大のカルデラ、屈斜路カルデラ。写真は西北にある外輪山のである美幌峠から。左の先に見えるのは斜里岳。」
(編集者注)当スライドでは「藻琴峠から」というタイトルがついてあるが、ウェブのコメント通り、「美幌峠」が正しいと思われる。
 

 
(60)カルデラ噴火(講演資料#60/84)
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【島村】これは阿蘇山の「カルデラ噴火」です。阿蘇山は過去4回のカルデラ噴火をしています。九州全体に火山灰を降らした。九州全体に非常にもろいシラス台地を形成した。図の茶色の部分は阿蘇カルデラからでた火砕流の分布です。4回の噴火で一番最新のものです。火砕流というのは、火山ガスとか水蒸気とかで構成されるため非常に軽い。従って火砕流は海も簡単に超えてしまいます。中国地方にも阿蘇からの火砕流がきているのがわかります。
【補足】
・NHKのHPに「第5回  カルデラ噴火! 生き延びるすべはあるか?」(藤井敏嗣氏)というコラムがある。その中の「カルデラ噴火に伴う巨大火砕流」に「[図3]阿蘇4噴火の火砕流の分布」(出典:大木・小林「日本の火山」1987より)とい図がある。図のみ表示の場合はココをクリック。

 

 
(61)巨大噴火の影響(講演資料#61/84)
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【島村】群馬県と長野県の境に浅間山があります。1873年の噴火で火山灰を大量に出しました。その火山灰はグリーンランドの氷河からも見つかりました。火山灰を顕微鏡で調べて、どこから来たものか判定し、浅間山の火山灰と分かりました。この噴火は天明の飢饉をもたらし、それは6年間続きました。死者は2万人と言われてますが、当時の文献を調べると、もっとずっと多かったのではないかという話があります。被害が大きかった各藩は、幕府から指弾されることを恐れたため、被害を過小に報告したのではないかとのことです。
 

 
(62)巨大噴火の世界史への影響(講演資料#62/84)
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【島村】巨大噴火は日本だけではありません。1883年にもインドネシア・クラカタウ火山が大噴火しました。2004年にはインド洋大津波地震で、22万人以上の人が亡くなりましたが、それよりずっと前に起きた1883年の火山噴火で、36000人が死亡しました。この時も津波の死者が多かった。噴火の影響はそれだけではなくて・・・。
 

 
(63)1883年の巨大噴火の世界的な影響(講演資料#63/84)
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【島村】1883年の巨大噴火は気候の変動をもたらします。北半球全体の気温が0.5−0.8℃低下しました。それくらいの温度低下でも大変な影響を与えます。その結果、数年間、世界各地で冷害と不作となります。ビショップの環という自然現象が見えました。太陽の周りに傘がかかる現象です。数年間、世界中で、異様な赤い夕焼けが観測されました。1893年にノルウェーで描かれたムンクの「叫び」は、1883年の噴火から10年経ったころ描かれたことになります。その当時、ムンクが実際に見た光景から影響を受けて、「叫び」を描いたのではという学説があります。
 

 
(64)ムンクの「叫び」(講演資料#64/84)
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【島村】(省略)
 

 
(65)巨大噴火の世界史への影響(講演資料#65/84)
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【島村】さらに前なのですが、535年にインドネシア・クラカタウ火山が大噴火しました。それによりジャワ島西部のカラタン文明が姿を消しました。しかし、それだけではなくて・・・。
 

 
(66)クラカタウ噴火の世界史への影響(講演資料#66/84)
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【島村】東ローマ帝国が衰退し、ヨーロッパで、ネズミが媒介するペストが流行し、イスラム教が誕生します。中南米にあるマヤ文明が崩壊し、少なくとも4つの地中海国家が誕生します。大きな噴火というのは、人類にとっての大事件が次々にひきおこされたのではないかといわれています。
 

 
(67)巨大噴火の世界史への影響(講演資料#67/84)
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【島村】1783年にアイスランド・ラキ火山が大噴火しました。1789年のフランス革命の引き金になりました(※)。大規模な噴火は文明を衰退させたり、新しい文明を作ったり、新しい宗教を作ったりします。
【補足】
※フランス等でラキ火山による寒波等の異常気象が続き、フランス国内の食糧不足が革命の原動力の一つになったのではないかと言われている。(wiki等による)
 

 
(68)巨大噴火の影響(講演資料#68/84)
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【島村】日本にかえりますと、1783年(天明3年)には浅間山も大噴火しました。丁度ラキの噴火と同じ年の噴火ですので、ラキの影響もあるかもしれません。浅間山の地元で1200名の死者を出したほか、東北地方で膨大な餓死者を出しました。天明の飢饉を引き起こしました。
 

 
(69)火山前線(講演資料#69/84)
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【島村】(省略)
 

 
(70)大地震の影響(講演資料#70/84)
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【島村】M9を超える地震はモーメント・マグニチュード(Mw)で計算しますので、地震計が近代的になってから分かるようになってきました。1960年ごろから、Mwで計算できるようになった。環太平洋では、東北地方太平洋沖地震を含めて、M9を超える地震は7つ(※)知られています。東北地方太平洋沖地震のぞいた地震は全て、地震から数年後もしく数10年後の間に、近くで大きな火山の噴火があります。中には1000年の休止後といったものもあります。
【補足】
※当スライドを見る限りでは、1952年、1957年、1960年、1964年、2004年の5つの地震に2011年の東日本大震災を足して、6つのように思えますが、島村氏は次スライドにある2010年のチリ中部地震(Mw8.8)をM9クラスとしてカウントして、7つという値にしたのではないかと思います。
・「リスク対策.com」2016年1月25日号(Vol.53)に「巻頭インタビュー 火山噴火予知連絡会会長 藤井敏嗣氏」という記事がある。その中の「貞観地震と富士山の大噴火」というタイトルの中に「M9の地震は火山噴火を誘発」という図がある。図のみ表示の場合はココをクリック。
 

 
(71)大地震の影響(講演資料#71/84)
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【島村】これは巨大地震により近くの火山が噴火した例ですが、東日本大震災だけは今のところ大きな噴火を起こしていません。
【補足】
・内閣府HPに「図表1-2-13 世界の巨大地震と火山噴火」がある。図のみ表示の場合はココをクリック。
 

 
(72)東日本大震災以後、活発化した火山(講演資料#72/84)
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【島村】東日本大震災の震源域は茨城県沖から岩手県沖でした。モーメント・マグニチュードは9.0。実はその時に、焼岳、秋田駒ヶ岳、日光白根、九州の九重山等々の日本全土の火山活動が一時的に活発になっています。マグニチュード9を超える地震が起きたわけですから、大きなて噴火が日本のどこかで起きても不思議ではないということになります。
【補足】
・東京新聞に「【ナットク!Q&A】大震災で火山に異変? 箱根山 噴火の兆候なし」という記事(2013/4/3)がある。その中に「東日本大震災以後にうごめいた火山」という図がある。図のみ表示の場合はココをクリック。
 

 
(73)火山とプレートの「恩恵」(講演資料#73/84)
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【島村】日本列島とその地形を2000万年前に作ったのはプレートです。四季のはっきりした気候(冬の雪と首都圏の乾燥気候)もプレートが作ってくれたものです。農業への「恩恵」(土・水)があります。豊富な地下水(農業・工業・・)という「恩恵」があります。温泉・登山・観光等の「恩恵」もあります。
 

 
(74)火山と登山・スキー(講演資料#74/84)
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【島村】具体的にいうと、東北地方のスキー場はほとんど活火山です。スキー場も火山の斜面を利用しているところが多い。
 

 
(75)日本の気候はプレートが作った(講演資料#75/84)
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【島村】これは冬の日本列島の断面図です。大陸から冷たく乾いた空気が吹いて、日本海で、熱と水蒸気の供給を受けて、日本列島の山脈にぶつかって、雪を降らせる。日本列島の山を越えた空気は乾いていく。日本海側の雪の多い気候と太平洋側の乾燥した気候に分かれます。このような日本の気候はプレートが作ったと言えると思います。
 

 
(76)日本の農業は火山灰のおかげ(講演資料#76/84)
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【島村】これは桜島大根というのですが、火山のおかげです。噴火時の火山灰は短期的には悪さをしますが、長期的には農業に非常に役に立ちます。
 

 
(77)日本の農業は火山灰のおかげ(講演資料#77/84)
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【島村】奥のほうにある山が浅間山です。浅間山の火山灰のおかげで、レタスが栽培されています。
 

 
(78)製紙工場は火山の伏流水のおかげ(講演資料#78/84)
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【島村】富士山のふもとは伏流水が豊富です。沢山の製紙工場があったり、フィルム工場があったり、これはみんな富士山の伏流水を使っています。
 

 
(79)地熱発電所と火山前線(講演資料#79/84)
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【島村】地熱発電というもあります。地熱発電所は火山フロント(前線)にほぼそって分布しています。風力や太陽光発電とちがって天候に影響されません。そういった意味では一日中、一年中、出力が高くたもたれる。ただ、二つの問題もありまして、一つは国立公園の中での開発が許可されない、ボーリングをしていけないということです。もう一つは温泉業者がそこにある温泉が涸れてしまうのではないかということで反対しています。ここ数年で変わりまして、国立公園の外から斜めにボーリングも可能となっています。地熱発電は、いままでよりは増えると思います。
 ただし、増えたために別の影響がでるかもしれません。地熱発電はヒ素みたいな有害なものも一緒にでてくる問題があります。 日本の地熱量というのは、世界で三番目になります。アイスランドに行きますと、地熱発電がたくさんあるのですが、ここで動いている機械というのは、日本の機械なんです。日本としては、技術力があるので、地熱発電の可能性は非常に高い。
 

 
(80)房総半島南端にある海岸段丘(講演資料#80/84)
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【島村】火山の恩恵はたくさんありますが、地震の恩恵はあるのか。これは房総半島南端にある海岸段丘です。これは地震と対応していまして、地震のたびに段丘が形成されました。このように地震でも恩恵があるといえるのではないかと思います。
【補足】
・国土地理院のHPに「房総半島の海岸段丘」という記事がある。その中に「房総半島南端の段彩図」という図がある。図のみ表示の場合はココをクリック。
・島村氏のウェブに「地震が生み出す新たな陸地」というタイトルの記事がある。文中に房総半島の南端の空中写真がある。写真のみ表示の場合はココをクリック。
 

 
(81)原発から160km以内にある火山(講演資料#81/84)
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【島村】これは2013年7月原子力規制委員会「実用発電用原子炉の新規制基準」の「原発の火山リスクに関するガイドライン」から作成された図です。原発160km圏にある主な火山を示します。これをみると、すべての原発が火山の160km圏内にあることになります。
 

 
(82)東北地方太平洋沖地震直後の富士山の地震(講演資料#82/84)
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【島村】東北地方太平洋沖地震直後の富士山の地震(2011年3月15日22時31分頃)について説明します。東北地方太平洋沖地震の4日後に、富士山で地震が起きました。震度6強、M6.4、深さ16kmという内陸直下型地震が起きました。これは明らかに東日本大震災の影響です。この時は幸い噴火しませんでしたが、いずれ噴火するかも知れません。
【補足】
・気象庁HPの震度データベース検索 (地震別検索結果)を用いて、静岡県東部を震央とする、2011年3月15日22時31分46秒発生の「地震の震度分布図」を表示。
 

 
(83)結論1(講演資料#83/84)
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【島村】今日の結論です。日本列島というものは、プレートが作ったものです。地震と火山の「元」はプレートです。という話をしました。
 

 
(84)結論2(講演資料#84/84)
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【島村】日本は地震・火山国ですが、予知はまだまだです。(ただ、天気予報は方程式があります。)このところ「異常に」大噴火も首都圏の地震も少なかったが、このまま静かなことは絶対にありえない。「大噴火」が起きても不思議ではない。数千年に一度の「カルデラ噴火」も、一番最近が7300年前でしたので、いつ起きても不思議ではなく、いずれは起きます。
 

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